青い光の子と赤い光の子

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
青い光の子は夕方きまって秘密基地ときめている公園に一人で遊びに行くことが楽しみでした。その秘密基地はまだ友だちも知らない自分だけの秘密の公園でした。 夏のある日、青い光の子はいつものように秘密基地にしている公園へ一人で遊びに行きました。もう太陽さんも顔半分しか見えていませんでした。夕空は赤くそまっていました。 青い光の子が公園につくと砂場になにか金色に光るものをみつけました。 半ぶん砂にうまっていたので掘り出してみると、それは金色に光る星のかけらで、青い光の子のちいさな手のひらにのるぐらいのおおきさでした。 青い光の子は星のかけらを図鑑でしかみたことのなかったので大喜びです。 すぐにその星のかけらは青い光の子の大切な宝物になりました。 しばらく青い光の子が星のかけらであそんでいると、遠くから話し声がしてきました。とっさに青い光の子は星のかけらをポッケにおしこみました。 やってきたのは赤い光の子たちでした。 赤い光の子たちはまっすぐ砂場にやってくると  なにやら捜しはじめました。 青い光の子はすぐに察して怖ろしくなりました。 すぐに赤い光りの子の一人から声をかけられました。 「ずっとここにおったん?」 「さっききたばかりだよ」 「おまえこの砂場で星のかけらみなかった?」 赤い光の子の言い方がすごく怖かったので、青い光の子はおそろしくなってとっさに嘘をつきました。 「みなかったよ」 赤い光の子は疑い深げに青い光の子をにらみましたがあきらめて すぐに公園のあちこちを捜しはじめました。 青い光の子はその場を立ち去ることしか考えられませんでした。 星のかけらを持っていることをいうことなんて怖くてとてもできませんでした。 「もし持っているなんて言ったらどんな仕打ちにあうかわからない・・・」 いま青い光の子にとって星のかけらはどうでもよくなっていました。 正直に言う勇気よりも、怖さから逃げたい気持ちがまさっていました。 すぐにでも公園からたちさりたいとおもいました。 青い光の子は赤い光の子たちが星のかけらを捜すのに懸命になっているのをみながら、ゆっくり公園をでてゆきました。 赤い光の子の視線を少し感じていましたが、振り向かずそのばをさりました。 おうちに帰り着くと青い光の子は一目散にじぶんの部屋にはいりました。 おかあさんはまだ夕ご飯を作っているようでした。 青い光の子はポケットから星のかけらを取り出すとすぐに机の引き出しに隠しました。 もうどうしたらいいのかわかりませんでした。 星のかけらを持っていることが苦痛になりました。 窓から外をみるといつのまにかお月さまがでていました。 まだ夕ご飯はできていないようでした。 青い光の子はやっぱり赤い光の子に星のかけらを返そうと思いました。 机のひきだしから星のかけらをとりだすと、おかあさんに見つからないように玄関からとびだしました。 急いできたのですが、公園につくと誰もいませんでした。 青い光の子は持ち帰るか元の場所に埋めるか考えましたが、もちかえりたくなかったし、赤い光の子ともう遇うこともないだろうと思い、元の場所に半分うめておくことにしました。 青い光の子はもう大丈夫だと自分にいいきかせてその場をさりました。 それからなんにちかが過ぎたある日、青い光の子が通ってる光の小学校の廊下ですれ違いさまに青い光の子は誰かに呼び止められました。 ふりむくと赤い光の子でした。赤い光の子はすぐにいいました。 「おまえ星のかけらとったろう」 青い光の子は心臓が破裂するんじゃないかとおもうほどにびっくりしました。 こわさから青い光の子はとっさに嘘をつきました。 「ぼくは盗ってない」 赤い光の子は近づいてきていいました。 「おまえが帰るときポケットが大きくふくらんでいたぞ。星のかけらぐらいのおおきさだった。」 「ポケットにはいっていたのは電話だよ」 青い光の子は怖くてどうしても本当のことがいえませんでした。 赤い光の子はなおもつづけました。 「ぼくは公園に星のかけらをわすれたからすぐに引き返してきた。そのとき公園にいたのはおまえだけだった。」 青い光の子は意地でいいました。 「ぼくは星のかけらなんてみなかった!!」 そういうと青い光の子は逃げるようにそのばから走り去りました。 「まさかおなじ小学校だなんて・・・・・・」 青い光の子の心臓ははれつしそうでした。 「ほんとうのことをいったらどんな仕返しをされるかわからない。」 青い光の子はこわさからにげることばかり考えていました。 小学校がおわり、おうちにかえりつくと、青い光の子は急におなかがいたくなりました。そして、おなかをおさえながらベットにもぐりこみ、背中をまるめるようにして休みました。 それからというもの青い光の子は小学校で、帰り道で、公園で、いたるところで、 赤い光の子からみつかるたびに「どろぼう」といわれつづけました。 青い光の子はいつもにげてしまいました。 来る日も来る日も責められるのでとうとう青い光の子の輝きは小さくなってある日突然たおれてしまいました。 おかあさんはびっくりして光の病院につれていきました。しかし、病院ではなにもわかりませんでした。おかあさんも子供の様子が少しおかしいと気づいていましたが、どうしてこんな状態になったのかわかりませんでした。なぜなら青い光の子はとても優しい子だったので、なにもかもじぶん一人でかかえこんでいたからです。そして「どろぼう」とよばれていることでおかあさんを悲しませたくなかったのです。 青い光の子のお父さんは仕事ばかりで家に帰ってきません。おかあさんは田舎のおばあちゃんに子供のことをそうだんしました。おばあちゃんはたいそう心配して飛んでやってきました。 おばあちゃんはやつれかえった孫の顔を見てとても悲しみました。そして青い光の子をおばあちゃんの田舎で療養させることにしました。 おばあちゃんの田舎は美しい山々にかこまれて木々や草花や川にたくさんの妖精がすんでいました。青い光の子はおばあちゃんの田舎の自然の妖精たちからたくさんの光で癒してもらいました。 夜になるとお星さまがたくさんまばたきました。おばあちゃんの家の近くを流れる川さんのいびきで眠れないときは、おばあちゃんは、いつも、神様の光の王国にいってしまったおじいちゃんの自慢話をしてくれました。そのはなしのおちは必ず「おじいちゃんはおしゃれでハンサムだったけど猫背だった」と残念がるところでした。 おばあちゃんはなにを悩んでいるのかということは聞いたりしませんでしたが、青い光の子のことをぜったいに信じていました。その愛の波動が伝わってくるので青い光の子も自分に自信をとりもどすことができました。そして勇気がわいてきました。 大自然のなかで青い光の子はしだいに元気を取り戻してきました。 小鳥さんたちといっしょに青空たかく飛ぶこともできたし、龍さんと雲の中でかくれんぼすることもできるようになりました。 こうしておばあちゃんの田舎で元気をとりもどした青い光の子はすっかりもとの輝きを取りもどすことができました。 夏もおわりにちかづいたころ、おかあさんが青い光の子をむかえに来ました。すっかり元気になったむすこをみると抱きしめてなみだを流しました。青い光の子も涙がとまりませんでした。 さて、おかあさんといっしょにお家に帰ってきた青い光の子はあることを決意していました。 青い光の子はとても優しく思いやりがある子でしたが気が弱い子でした。人に優しくすることはできても、人にじぶんが思っていることをはっきり伝えることが苦手でした。 でもいま青い光の子はこわさから逃げないで、赤い光の子にむきあうときめたのです。 それはこんど赤い光の子にあったら勇気を出して本当のことを話そうということでした。 本当のことをはなしてどうなるのか、どんな目にあうのかわからないけど、このまま逃げてはだめだとおもいました。 「逃げ続けるかぎり誤解されどろぼうよばわりされつづける・・・」 「もうこれいじょう後ろめたさや胸を押さえつけられるような苦しみがつづくのはいやだ」 光の小学校の夏休みもおわってしばらくたったある日、青い光の子がおうちの近くの公園で遊んでいると、どこからともなく赤い光の子が仲間といっしょにあらわれました。 青い光の子の心臓がはれつしそうにどきどきしています。 でも青い光の子は逃げずに赤い光の子のでかたをまちました。 赤い光の子は青い光の子をにらみつけるといいました。 「きょうはにがさんぞ。おれの星のかけらかえせ」 青い光の子は勇気をふりしぼっていいました。 「もっていないよ」 赤い光の子は近づいてきていいました。 「うそをつくな!!おまえが盗ったのはまちがいない!!」 赤い光の子はいまにもなぐりかからんばかりでした。 「たしかに星のかけらを砂場でひろったよ。でもその日の夕方に元の場所にかえしにいった」 赤い光の子は黙って聞いていました。そしてしばらくしていいました。 「やっぱりおまえがひろったんだな」 「あのときおまえのポケットが大きくふくらんでいたのをみた。だからおまえがもっているにちがいないとおもっていた」 青い光の子は、こわさで手が震え足はすくんでいました。 でもこんどはこわさから逃げませんでした。 赤い光の子はおそろしいほど青い光の子をにらみつづけていましたが、とつぜんあきらめたような表情でいいました。 「もういいよ、、、いけよ」 青い光の子が動けないでいると、さらに大きな声でいいました。 「はやくいけよ!!」 青い光の子は「ごめん」といってそのばをいそいでさりました。 赤い光の子は去ってゆく青い光の子のうしろすがたがみえなくなるまでにらみつづけていました。 赤い光の子にとってあの星のかけらは大切な宝物だったので、いつも持ち歩いていました。ところが星のかけらをなくしたあの日は友だちと遊ぶのに夢中になって、うっかりわすれてしまったのです。あわてて公園にひきかえしてきたものの星のかけらはすでになく、とても残念でしかたがありませんでした。 赤い光の子は気が強く気性がはげしかったので、青い光の子を許せず責めてばかりいました。あまりにも星のかけらに執着したことと、青い光の子を責める心、裁く心がつよかったので、赤い光の子の光の輝きはしだいに小さくなっていったのです。 赤い光の子は青い光の子がこわがっていることをじゅうぶんわかっていました。しかし青い光の子は逃げないで本当のことを話しました。赤い光の子は青い光の子の勇気をみて心を動かされたのです。 赤い光の子は勇気をもって青い光の子を責める気持ち、裁く気持ちを手放しました。すると赤い光の子の魂の輝きはもとの輝きより光り輝きました。 それから青い光の子のまえに赤い光の子はあらわれることはありませんでした。 青い光の子もじぶんの心の弱さと向き合う勇気をもったことで、より魂が光り輝いたのです。 おわり
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!