1:出会い

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

1:出会い

「 う、うぁぁぁぁァァァ!!」 や、やばい落ちる!この高さから落ちたら骨が折れるって!しかも下に人が……うぅ、なんでこんなことになっちゃったんだ ____15分前 僕は新入生として佐川高校の入学式に出るためにワクワクしながら家を出て高校の近くまで来ていた。 ワクワクしすぎて家を出るのが早くなり、入学式が始まるまで1時間ほどあったので、学校の近くにある桜並木を歩いて暇つぶしをしていた。 先週、家族でお花見をしたのだが、その時と同じように桜がたくさん咲いていてとても綺麗な景色だった。 ただ歩いているだけでは暇だったので、桜の花びらを拾い、上に投げて遊んでいた時だった。 「ニャーン」 「ん?猫の鳴き声?」 前の方から猫の鳴き声が聞こえた気がした。 ここの桜並木は道の入口と出口のちょうど真ん中辺りに広場のような場所があって、その広場の真ん中には大きな桜の木がある。僕はその広場の手前辺りにいたのだが、広場から猫の鳴き声がして行ってみることにした。 「うーん…広場の方から声が聞こえた気がしたんだけど…どこにいるんだろう」 「ニィ〜 ニャーン」 「うーん……あ!」 猫を探してキョロキョロしていると桜の木の上に小さな白い猫がうずくまって鳴いていた。 あんな高い所までどうやって登ったんだろうかきっと降りれなくなってるのだろう。 僕は助けたい一心で木を登り始めた。 小さい頃に木登りをしたことがあったが、ここまで大きな木は登ったことが無い。 黙々と登っていると、あと少しで猫に届く所まで来ていた。 「猫ちゃん おいで〜怖くないよ」 「ナーン」 「もう少しこっちにおいで〜」 「ニャー」 もう少しで手が届くのだがこれ以上進んでしまうと落ちてしまうくらい木が細くなっていて、猫に触れることが出来なかった。もう少しこちらに来てくれれば届くのだが僕の言葉が分からないのか怯えていているのか、猫がこちらに来ることは無かった。 「僕がもう少し進むしか…」 ____パキ 「う、うわぁぁぁァァァ!」 という事だ。 何とか進んで猫を抱えることが出来たが体重に耐えられなかった木が歪み、体勢を崩し落ちてしまった。しかもその下に人がいるという何と運の悪いことか。 僕は咄嗟に叫んだ。 「 避けてぇぇぇー!」 「....?」 ____どしん 「うぅ……」 「…………」 ……ん? 激しい痛みを覚悟したのだがそこまで痛くはなく、何か下に…… 「うわぁあああ!ごごごごめんなさい!大丈夫ですか?!今すぐどきますね!?」 「………あぁ」 「ミャーン」 僕は落ちた時に 下にいた人を 思いっきり下敷きにしてしまっていたようだ。落ちる時に叫んだのだが間に合わなかったみたいだ。 僕は彼のおかげで 特に怪我は無いのだが 彼は大丈夫だろうか。 「本当にすみません…怪我ないですか?」 「…あぁ特に問題は無い。」 「猫を助けるために木に登っていたら落ちてしまって。怪我がなくて良かったです。」 「…君達も怪我はないか。」 「はい!僕は全然大丈夫です!猫ちゃんも大丈夫そうです。」 「ミャー」 あれ、よく見たらこの人佐川高校の制服着てる。 ネクタイの色が違うから2年生か3年生だろうか… ………あぁ!入学式を忘れていた、今の時間は8時50分、入学式の10分前だ、そろそろ行かないと入学式に間に合わなくなる。さすがに入学式から遅刻はしたくない。 「……もうすぐ入学式が始まる。新入生なら早く行った方がいい。」 「はい!ありがとうございました。」 「………フッ…」 彼は何か面白そうに笑った。 少し吹き出すように笑った彼の姿は、今まで見てきた男の人の 誰よりもかっこよく見えたのだが、同じ男として少し 嫉妬してしまった。 「………?どうしたんですか?」 「いや…気にしないでくれ。」 「そうですか?じゃあ僕はこれで失礼します。」 「……猫も連れて行くのか。」 「あっっ!そうだった、この子どこの猫ちゃんなんでしょうか… 一応首輪?というか赤い紐? みたいなのが あるから飼い猫なんでしょうか?」 「……君は入学式があるだろう。俺はまだ登校時間では無いから何とかしておこう。」 「本当ですか!ありがとうございます!!」 僕は彼に猫を預けて学校へと走った。 結局 なぜ彼が笑ったのかよく分からなかったが、彼の笑った姿が僕の頭の中に残っていた。 後でお礼に行こうと思ったのだが、名前を聞き忘れてしまったことに気づいた。 しかし別れた後に気づいたからもう既に遅いのだが。 今日の入学式は無事終わり、僕は家に帰りいつもより少し豪華な夕飯を食べた後、寝る準備をしていた。 「今日助けた猫ちゃん、ちゃんと家に帰れたかな… それにあのぶつかった男の人、多分うちの学校の人だよね。」 僕の頭の中では白猫とぶつかった彼のことでいっぱいだった。もちろん白猫のことも心配だが、それよりもぶつかった彼のことがとても気になっていた。 名前を聞くのを忘れてしまったから彼を探すことが出来ない。 お礼も出来ないし、白猫のことを聞くことも出来ない。 「まぁ、学校に行けばすれ違ったりするかもしれないし、そのうち見つかるよね。 それにしても、あの人すっごくかっこよかったなぁ。」 シュッとした鼻に切れ長の目、癖のないサラサラな髪に高い身長、赤ちゃんのようにきれいな肌、何となくいい匂いがした気もする。 それに声もとてもかっこよかった、低すぎず高すぎないような心地の良い声だった。 「また、会いたいなぁ。」 僕はそんなことを考えながら寝っ転がっていたが、気づいたら、そのまま寝てしまっていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!