10:文化祭

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10:文化祭

今日は文化祭、みんなが今日のためにたくさんの準備をしてきた、それはもちろん僕もそうだ。 先輩と夏祭りに行ったあの日の後、すぐにテスト期間に入ってしまって絵を描く時間が少なくなってしまったが、無事に完成した。 僕達美術部は人数が多く、作品の数も多いし大きい、なので使用できる教室が多いのだが、僕はその中でも1番美術室から遠い場所をクジで当ててしまい運ぶのが大変だ。僕の作品は大きくて1人では運べないので、部長や他の部員の方にも手伝ってもらった。 「はぁああ…大変だった、階段とか前見えないし……絵ごと階段から落ちるかと思った…」 「ほんとだよ…なんで1番遠い教室を引くかな、」 「すいません部長…」 「にしてもすごいな桃井の作品は、サイズも大きくて迫力がある、…桜の木に白い猫、なんで桜の木なんだ?今は桜の花は咲いていないが、」 「えっと…なんというか、この桜の木と猫のおかげで今の僕があるというか、えっと…思い出みたいなものですかね、」 「そうなのか。ここの教室は美術室から1番遠くて大変だが、1番映える場所なんだ。窓が多くて光がたくさん入る、だからこの絵もより綺麗に見えるだろう。いい場所を引いたかもな。」 「確かにそうかもしれませんね」 文化祭開始時刻まであと30分になり。 僕は文化祭が始まるまでに絵の最終確認をしたり、クラスの出し物の準備をした。うちのクラスはパンケーキ屋さんだ。クラスの中をカフェっぽくして、色んな種類のパンケーキを提供することになっている。パンケーキを作るのは料理部に入っている赤井さんと水野さんだ。僕はお客さんの注文を聞いて2人に伝える係だ。 「今日は頑張ろうね、俊介くん」 「あぁ、頑張ろうな。そういえば午後は自由時間だけど小太郎はどうするんだ?」 「僕は先輩と校内をまわるつもりだよ。俊介くんはどうするの?」 「俺は部活のやつとまわるかな。…今日、先輩に言うんだろ。大丈夫なのか?」 「う、うん、緊張するけど、やっぱり伝えたい…どんな結果でも、伝えることに意味があると思うんだ、だから頑張るよ」 「そっか、上手くいくといいな。」 「2人とも〜もうそろそろ始まるからこっち集まってー」 「「はーい」」 その後すぐに文化祭が始まったのだが、すぐにお客さんが集まってきて、うちのクラスのパンケーキ屋さんは大盛況だった。 文化祭は、他校の生徒や地域の人、親なども来るので人が多い。 うちのクラスは他校の女子高生に人気だったようで、教室の外に行列ができていた。 お客さんが全く来ないよりはいいが、さすがに来すぎだろう。 急いで注文をとっていると、あっという間に時間が経っていた。 「俊ちゃーん、小太郎ちゃーん遊びに来たよー!」 「青川、2人の邪魔をするな。あと声を小さくしろ、他の人もいるんだ。」 「ごめんごめん。2人とも大変そうだね。」 「まぁ僕達はそろそろ終わるので大丈夫なんですけど、午後もたくさん人が来るんでしょうか、」 「うーん、3時頃になったらまたお客さん増えるかもねぇ。でも4時には終わる予定だし、大丈夫じゃない?」 「そうですよね…あっ、黒田先輩もう少して僕の担当終わるので待っててください!」 「あぁ。待っているから急がなくても大丈夫だ」 僕は1時から4時まで先輩と一緒に文化祭をまわる約束をしている。 あと少しで僕の担当時間も終わるからそれまで頑張ろう。 「青川先輩に黒田先輩は何を注文しますか?」 「それじゃあ俊ちゃんのおすすめで!綾人もそれでいいよね。」 「あぁ。」 先輩達がパンケーキを食べているうちに僕の担当時間も終わり、かわりのクラスメイトが教室に戻ってきた。僕はクラスメイトに衣装を渡して、先輩の待っている場所に走った。 「先輩!終わったので行きましょう!」 「お疲れ様。桃井はどこの出し物に行きたいんだ?」 「僕、たこ焼き食べたいです!」 「たこ焼きなら3年がやっているやつだな、今から行くか。」 僕達は3年3組がやっているたこ焼きを食べに行った。 そこで買ったたこ焼きは鰹節がまぶされていて、とても熱そうだが、美味しそうだ。 「いただきまーす! …あっふい!あふいでふせんふぁい!」 「大丈夫か。ちゃんと冷ましてから食べるんだ。」 「わふぁりまひた、…………はぁ〜熱かった、でもすごく美味しいですよ!先輩も食べますか?」 「…ひとつもらおう。」 「…それじゃあ、口開けてください!」 「………確かにこれは…あ、熱いな、…口が火傷しそうだ」 ……今僕があーんってしたのを食べた…恥ずかしいけどなんだか楽しいな、それにたこ焼きが熱いのか、はふはふしながら食べる先輩、可愛すぎる 「次は何しようか。また何か食べるか?」 「次はなんか遊びたいです!」 「…じゃあ俺のクラスに来るか?うちのクラスでは脱出ゲームをやってるんだ。」 「先輩のクラスですか!!行ってみたいです!」 先輩のクラスでやっていた脱出ゲームは本格的で、謎解きが難しかった、先輩は答えを知っていて1人で解かないといけなくて、すごく難しかった。 先輩がさりげなくヒントを出してくれて、やっとゴールできた。僕一人じゃ謎が解けずに、リタイアしていただろう。 「む、むずかしかった…あの謎解き誰が考えたんですか?考えた人すごすぎます、全く解けませんでした…」 「…俺だ。クラスメイトに考えてきてくれ、とお願いされて考えたんだが、そんなに難しかったか?」 「えぇっ!先輩が考えたんですか!すごい、普通あんなの思いつきませんよ、」 「それは褒めてくれているのか?」 「褒めてますよ!」 脱出ゲームが終わったあとは、ホットドッグやフルーツポンチを食べたり、演劇部の劇を見に行って過ごした。演劇部の美女と野獣は、思わず泣いてしまった。 文化祭は、もう少しで終わる時間になって、人が少なくなってきた。もう残っているのは学校の生徒だけになっている。 あたりは真っ赤に染っている、なんだか寂しい雰囲気だ。 もう文化祭は終わるが、僕にはまだやることがあるのだ。先輩にお願いして、美術部の展示を一緒に見に行って欲しいと前日にお願いしてあったのだがそろそろ美術部の展示も片付けられてしまうだろう、早く展示されている教室に行かなくては。 「あの、先輩今から美術部の展示を見に行きませんか?」 「あぁ。もちろんだ、前から見に行くと約束していたし、昨日も一緒に見る約束をしたからな。桃井の作品はずっと楽しみにしていたんだ。」 僕達は展示されている教室まで歩いた。 その間、僕はずっとドキドキしていて緊張していた。 教室に着くまで、ずっと俯いてしまっていて、先輩に心配されたが、上手く言葉が返せなくてさらに心配させてしまった。 嫌われてしまうかもしれないし、先輩を困らせてしまうかもしれない。 それでも僕は今日、先輩に"告白"すると決めたんだ。
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