3:再会

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3:再会

それから1週間よく考えた結果、僕は美術部に入ることにした。 この学校には 美術部の制作した作品を展示しておく場所があるのだが、そこにあった作品に心を奪われ、美術部の入部を決めた。 その作品は、前回の文化祭のために美術部の部員全員で描いたものらしく、大きなクジラが描かれた横断幕だった。 今年の文化祭でも同じサイズの横断幕を描くらしく、僕も参加できると言われたので とても楽しみにしている。 そんなこんなで入部した美術部だが、今まさに最初の課題が始まるところだ。 課題内容は 他の部活の人のデッサンだ。 部長から、各部活の特徴がわかる瞬間をデッサンしなければならないと言われた。 例えば、サッカー部ならシュートをする瞬間、野球部なら ボールを打ったり、投げたりする瞬間 などの躍動感のあるものを描かなければならない。 僕は部活に入る時に 気になっていた、弓道部にデッサンをさせてもらうことに決めていた。 そして僕は今、弓道部の部長さんに案内され、弓道場に来ていた。弓道部の部長は、白井 由奈さんという方だった。 「ここが弓道場よ。」 「案内してくださってありがとうございました!」 「気にしないで。とこで貴方、デッサンしに来たのよね?」 「はい! 弓道部の方が弓を引いている瞬間をデッサンさせてもらいにきました!」 「デッサンなら、あそこにいる黒田がいいと思うわよ。」 「黒田さん?」 そう言って彼女は1人の部員を指さした。 彼女が指した先には 身長の高い男子生徒が弓を構えていた。 僕は彼に見覚えがあった 入学式の日に、僕が桜の木の下で出会った彼だ。 「えぇ、2年の黒田綾人って子よ。うちの部で1番綺麗な弓の引き方をするのよ。だから描くなら彼がいいと思うわ。もうそろそろ休憩の時間だから、聞きに行ってみるといいわ。私はやることがあってここを離れるから、困ったことがあったら部員に聞いてね。」 そう言って彼女は去っていった。 その後部員の人達は休憩に入ったようで水分補給をし始めた。 僕はその隙を狙って彼に話しかけに行った。 「あの!すいません!」 「君は...」 「僕、桃井小太郎って言います!入学式の日、桜の木から落ちてきた…」 「…………あぁ、猫の。」 「はい!そうだ、あの時の猫ちゃん、どうなったんですか?」 「学校の近くの住宅街で迷子の猫のポスターを見つけて電話をした、その後白猫の飼い主が迎えに来て連れて帰って行った。」 あの猫には首輪のような赤い紐をつけていたから、飼い猫だと思っていたが、あっていたようだ。 家から出て、近くにある桜並木まで迷い込んでしまったのだろう。ちゃんと飼い主が見つかってよかった。 あのまま桜の木の上にいたら、ずっと飼い主の元に帰れなかっただろう。 「そうだったんですね。飼い主さんも猫ちゃん、見つかって良かったです!」 「……猫の話をしにここまで来たのか?」 「あっ、そうだった。僕、美術部の課題でデッサンのモデルを探しに来たんですけど、部長さんに黒田綾人さんって人がおすすめだって言われてお願いしに来たんです。」 「…デッサンか……わかった、協力しよう。」 「本当ですか!ありがとうございます!」 「…いつやるんだ?」 「昼休みに空き教室でやるのはどうですか?」 2日前にお昼を食べる場所を探している時に、3階の一番端の教室が使われずに放置されているのを見つけた。少しホコリっぽかったから掃除をして、そこでお昼を食べている。 広さは十分にあるし、弓を構えられるくらい天井は高い、そこでならゆっくりデッサンできるだろう。 「わかった。服装は何か指定があるのか?」 「弓道部なので袴の方がいいんですけど、大丈夫ですか?」 「あぁ問題ない…明日の昼休み、3階の空き教室だな。」 「はい!じゃあ僕は美術室に戻るので、そろそろ失礼します。」 「そうか。」 そう言って僕達は別れた。 美術室に戻らなければならないのだが、明日の昼休みが楽しみすぎて落ち着かない。この興奮を叫びたいくらいだ。 名前を聞き忘れて探すことができなかったが、またこうして会うことができた。 また会えた嬉しさと、明日の昼休みへの期待で、僕はしばらくソワソワしていた。
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