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5:土曜日
今日はついに土曜日だ。案の定昨日の夜は全く寝れなかったのだがなんとかなるだろう。
今日は9時に学校の校門前で先輩と待ち合わせすることになっている。
僕は6時に起きて画材の準備をしたり、朝ごはんを食べたりしていた。
「うぅ、緊張しすぎて胃が痛い……」
そんなことを呟きながら時間が来るのをドキドキしながら待っていた。
_____9時 校門前
「あっ先輩!おはようございます!!」
「あぁ。おはよう、今日も元気だな。」
「はい!ちょっと緊張して寝れなかったんですけど……それ以外はすっごく元気です!」
「ははっ……なんだか小学生みたいだな。」
「まぁそんなことは気にしないで、弓道場に行きましょうか。」
僕達は校門から学校に入り、歩き始めた。
今日はほとんどの部活が休みなのか、サッカー部のボールを蹴る音しか聞こえない。
周りにも人がいなくて、本当に先輩と二人って感じだ。さっき先輩に会った時から心臓がバクバクなっているが、聞こえてないだろうか。
そんな心配をしながら歩いていると、あっという間に弓道場に着いた。
デッサンは、先輩が袴に着替えて 僕がデッサンの画材をセッティングした後すぐに始まった。
「それじゃあ...少し上に腕をあげてもらえますか。」
「……この辺りでいいか?」
「もう少し上でお願いします。」
僕は細かく説明しながらポーズをとってもらい、デッサンを描き始めた。
それから2時間ほど僕は夢中で絵を描き続けた。
モデルが先輩なのもあって、いつもより集中して描くことができた 我ながら最高にかけたと思う。
「…………よしっ...描けました!」
「………………」
「あっ!もう体崩していいですよ。」
「はぁぁああ………2時間あの体制は流石に体がきついな。……」
「そ、そうですよね…すいません…そうだ! 肩もみしましょうか?僕、母親に肩もみするんですけど、すごく上手いって言われるんです!」
「意外な特技だな、ならお願いしよう。」
「任せてください!」
僕は母親お墨付きの肩もみを先輩にしてあげた。
確かに弓を引くのは力がいると聞いたことがある、あのポーズを2時間も続けると肩や腕が大変なことになるだろう、申し訳ない。
僕は肩もみをしながら、先輩に話しかけた。
「先輩はなんで、弓道を始めたんですか?」
「祖父が弓道をやっていて、小さい頃からそれをずっと見ていたんだ、それで俺も弓道をやりたいと思ったんだ。そういう桃井はなんで美術部なんだ?」
「僕は美術部の展示室にあった去年の文化祭の横断幕を見て、僕も描きたい!って思ったんです。だから美術部に入ったんです。今年の文化祭も、横断幕を描くそうなので、楽しみなんです!それに個人の作品も描くので、よかったら先輩も文化祭の時に見に来てください!」
「あぁ、あのクジラのやつか。確かにあれは迫力があったな。…桃井の作品は見に行こう。約束する」
「それと、今回の課題のデッサンも、絶対展示してもらえるように頑張ったので、見に来てくださいね!」
「あぁ、展示されたら教えてくれ。……肩、ありがとう。かなり良くなった。確かに肩もみの才能があるようだな。」
「肩の痛みが少なくなって良かったです!肩もみの才能があってよかった。」
その後は、帰る支度をしてから弓道場を出て校門前まで歩いた。
このまま校門前についたらもう帰らないといけないと思うと、なんだか悲しい気持ちになってきた。もっと先輩と話したかったが、今日は先輩も疲れただろうからまた今度ゆっくり話がしたい。
「今日はありがとうございました。」
「いや…俺こそ貴重な体験だった。」
「あの……デッサンは終わっちゃったんですけど、まだ…先輩とお喋りしたくて……昼休みに会いに行ってもいいですか……?」
「あぁ、ぜひ来てくれ。次は昼ご飯も持って話そう。」
それから少し会話してから僕達は別れた。
僕は帰り道、歩きながら今日のことを思い出していた。
今日はなんだかとても気持ちがふわふわしていた気がした、今日はたくさん先輩とお喋りできたし、デッサンも完成することができた。
とっても楽しかった 今日先輩と話してる時、なんだかいつもと違った気がする……あの感じはなんだったんだろう……。
なんだか分からないけど、僕はまた先輩に会えるのが嬉しくて、少しだけスキップをしながら帰った。
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