6:意識

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6:意識

___1週間後。 デッサンをした日から1週間たった今日は、誰の作品が展示室に飾られるか発表される日だった。 朝から美術室にたくさんの部員が集まっている、普段部活に顔を出さずに作品だけ提出している先輩もいて、なんだか緊張してきた。 部長が発表するようで、僕たち部員はドキドキしながら部長が言うのを待っている。 僕はすごく自信があるのだが、他の部員もそう思っているだろう。不安だが、せっかく先輩に手伝ってもらったので僕は絶対に選ばれたかった。 「それじゃあ、今回の課題の展示される作品を発表するよー。展示される作品は、桃井が描いた弓道部のデッサンでーす。おめでと〜」 「……えっ!僕ですか!!!」 __ガタンッ 「お、おぉ そうだよ。落ち着け桃井、一旦座れ。」 「ほんとにほんとに僕ですか!」 「落ち着きなって。」 発表された瞬間僕は思いっきり椅子から立ち上がってしまった。 自信はあったが、不安だったのでとても嬉しい。 早く先輩に報告したい気持ちを押えて、椅子に座った。 「もちろん他の作品全て、躍動感があって完成度も非常に高かった。その中でも特に、桃井の作品は細かい所までよくできていた。だから今回は桃井が展示となった。次の課題では全く違う内容にする予定だから、次も頑張ってくれ。それと、来週になったらまた新しい課題の発表されるが、それまでは好きに活動していいことになった。それまでにしっかり画材の準備をしておくこと。それじゃあ、そろそろ時間だから解散にする。」 部長の話が終わったあと、僕はすぐに教室に行って俊介くんに報告した。 「俊介くん! 今回の課題の展示に選ばれたよ!これってやっぱり先輩のおかげだよね!展示室に2週間くらい飾ってあるから絶対見てね!」 「まじか!おめでとう。今日の放課後見に行ってみるわ。」 「あぁ〜。早く先輩に言いに行きたい!喜んでくれるかな!」 「小太郎はほんとに先輩が好きだな。」 「もちろん!先輩かっこいいからね!憧れちゃうよ!」 「……かっこいいだけなのか?なんか他にないのか?」 「何が??」 「いや、なんでもない。……あ、先生来たから席戻ろうぜ。」 俊介くんとの会話は担任が教室に入ってきて終わってしまった。 俊介くん何か言いたそうにしてたけど、なんだろうか。 「今日は授業の前に決めることがあります。もうすぐ体育祭が始まるので、出場競技を決めたいと思います。中学では、体育祭練習があったと思いますが、高校ではほとんどないのでちゃんと考えて決めるようにしてください。あと、うちのクラスのハチマキの色は青に決まりました。後でハチマキを配るので、本番までに無くさないようにしてください。」 そう言って先生は 黒板に体育祭の競技をそれぞれ書いていった。 騎馬戦に借り物競争、棒引きに色別対抗リレー 100メートル走があった。 1人2つは出なきゃ行けないみたいなので、僕は借り物競争と100メートル走に出ようと思う。 色別対抗リレーはクラスの6人だけのようで、僕はクラス代表になれるほど足が速くないので関係ないだろう。 「俊介くんは何するの?」 「俺は騎馬戦かな……でも、色別もいいな、」 「俊介くんは足速いからいいんじゃないかな?」 「小太郎は何やるんだ?」 「僕は借り物競争と100メートル走かな、騎馬戦は中学でやったから借り物競争やってみたいんだよね〜」 「それじゃあ、やりたい競技が決まった人から黒板に名前書きに来てくださーい。」 先生がそう言うとみんなが黒板に名前を書き始めた。 結局1時間目は授業をせずに体育祭の競技を決めて終わり、その後の授業を受け、昼休みになった。 「やっと終わった〜 これで先輩のところに行けるよ! 先輩っていつも誰かと一緒にご飯食べてるのかな…良かったら一緒に食べたいんだけど……」 「とりあえず弁当もって行けばいいんじゃない?その場で聞いて無理なら帰ってくればいいじゃん。」 「そっか、そうだよね!」 僕は俊介くんに言われた通り、お弁当を持って先輩の教室に急いだ。 先輩の教室に着いた、僕は入口の近くにいた先輩に話しかけた。 「あの、すいません。今黒田先輩っていますか?」 「黒田くん?ちょっと待ってね。えっと………あそこの掃除用具入れの前の席に座ってるけど、呼ぼうか?」 「はい!お願いします。」 「黒田くーーーん!可愛い男の子が呼んでるよ〜」 「えっ…か、かわ」 「……あぁ。桃井か、どうしたんだ?デッサンの話か?」 可愛いなんて突然言われてびっくりしたが、先輩に会えたから気にしないでおこう。 それにしても今日もかっこいいなぁ。 これだけかっこいいからやっぱりモテるのかな… なんだかそれは嫌な気がする、なんでだろう…… 「あの!今日の朝発表されたんですけど、僕の描いたデッサンが展示されることになったんです!」 「そうだったのか。おめでとう、今日の放課後あたりに見に行こう。」 「……それで、あの、先輩もうお昼食べ終わりましたか?」 「いや、まだだが………弁当持ってきたのか、一緒に食べるか?...他に1人いてもよければだが。」 「お邪魔じゃなかったら一緒に食べたいです!」 「じゃあうちのクラスで食べよう。こっちだ」 先輩一緒にご飯食べれることになって、僕は心の中で喜んだ。 他に1人、と言っていたが先輩の友達だろうか。 先輩について行くと、金髪の少し派手目なイケメンが座っている席に着いた。 「おかえり〜ってなんか可愛い子連れてるじゃん ……もしかしてその子、最近綾人が言ってる元気な後輩ちゃん?」 「あぁ。こいつは青川亮、同じクラスのやつだ。」 「もぉ〜酷いじゃん綾人ったら、せめて友達って言ってよ〜。…青川亮だよ、よろしくね後輩ちゃん。」 「桃井小太郎って言います!よろしくお願いします!」 「……確かにこれは元気な子だね、それに……可愛いね」 「えっと、か、かわいい...ですか?」 「うんうん、なんかちっちゃくて可愛いし、ちょっとほっぺ触らせてよぷにぷにしてて気持ちよさそう。」 「…………」 「……え?なに?綾人が睨むと怖いからやめてよ」 ___ドスッ 「...いったぁああああ!なんでよ!酷くない!?今俺なんかした?!」 青川先輩を睨んでいた黒田先輩が思いっきり青川先輩の頭を叩いた。……さすがにあれは痛そうだ。 なんだか黒田先輩、機嫌が悪そうだかどうしたんだろうか…… 「青川先輩大丈夫ですか……?」 「うぅう...小太郎ちゃん慰めて...」 「桃井、こいつは気にするな、弁当食べる時間が無くなるぞ。」 「そ、そうですね!いただきまーす!」 「うぅ…俺は無視?...」 その後は3人で体育祭の話をしたり、青川先輩が騒いで黒田先輩に怒られたりしながら過ごしていた。 「小太郎ちゃんのクラスは体育祭、何色なの?」 「僕のクラスは青色って言ってました。先輩達のクラスは何色なんですか?」 「青だ。桃井のクラスと同じだな。」 「本当ですか!嬉しいです!」 先輩たちのクラスも青色だそうだ。同じ色同士は、同じ場所に座るから先輩の近くでラッキーだ。 そうこうしているうちに気づいたらお昼が終わっていた。 もう先輩といられないのは寂しいな...先輩といると時間の流れが早く感じる。 「じゃあ僕自分のクラスに戻りますね。」 「あぁ、また今度な。」 「……はい、また来ますね...」 「そんな悲しそうにしてどうした。」 「先輩といると、時間が過ぎるのが一瞬に感じて...なんだか寂しいです……」 「.........体育祭で近くに座れば長く一緒にいられる、それまで我慢してくれ。」 そう言って先輩は僕の頭を撫でてくれた。 「………………ねぇちょっと俺の事忘れてない?!それに突然イチャイチャし始めないでもらっていいかな?!ていうか君たちそういう関係なの?!俺知らなかったんだけど?!」 「青川うるさい。お前の思っているような関係では無い。」 「いや、そうだとしても俺への当たり強くない?!」
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