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9:夏祭り
待ち時間はとても退屈で、やることが無い。
しかし、先輩を待っている時間を退屈に思ったことは無い。
それは僕の中で先輩に恋しているんだと思う瞬間の一つである。
先輩を待っている間は退屈に思う暇がないくらいに、胸がドキドキして、先輩のことで頭がいっぱいになってしまう。今だって、心臓が破裂してしまうくらいドキドキしている。
「すまない。遅くなった」
「先輩! 僕もさっき来たところなので大丈夫ですよ。」
「そうだったのか、ならよかった。...それじゃあ行こうか。」
緑ヶ丘公園のお祭りは思っていた以上に人が集まっていて、規模の大きいお祭りだった。
僕は先輩とはぐれないように注意して進んで行った。
屋台も多く、見たことの無い屋台や食べ物があってお腹がなってしまった。
「お腹がすいたのか?屋台で何か買って食べようか。」
「僕りんご飴と唐揚げ食べたいです!」
「そうか。その2つならさっきあったな、戻って買いに行こう。」
やはり夏祭りと言ったらりんご飴だろう。わたあめやたこ焼き、焼きそばも美味しいが、僕はりんご飴を食べないと夏祭りって感じがしないので夏祭りに行く時は必ず食べるのだ。
最初の一口はとても硬いのだが、その後は外の暑さで溶けていい感じの硬さになるのだ。その溶けた感じも美味しい。想像していたらさらにお腹がすいてきた。
「すいません!りんご飴ください!あ、先輩も食べますか?」
「いや、俺は大丈夫だ。」
「そうですか?じゃありんご飴ひとつください!」
「はいよ〜350円ね。」
「うわぁ〜!美味しそう!いっただっきまーす!」
「すごく甘そうだな。唐揚げも買ってきたから、そっちも食べるといい。」
「ありがとうございます!...んん〜!唐揚げも美味しい!先輩はなにか食べないんですか?」
「俺は桃井が食べてるのを見るだけでおなかいっぱいだ。」
「そうですか?じゃあお腹すいたら言ってくださいね!」
「あぁ。……慌てて食べるな。喉に詰まるし、口についてるぞ。」
その後も僕は色々食べた。
わたあめに焼きそば、きゅうりの1本漬けも食べて、満足だ。お腹いっぱいになたので食べるのをやめて、屋台を見てまわることにした。
金魚すくいにスーパーボールすくい、くじ引きに輪投げ、色んな遊びがあった。
「あっ!射的だ!」
「やりたいのか?」
「はい、でも僕射的苦手で、全然当たらないんですよね...」
「そうなのか、なら俺がやろう。何が欲しいんだ?」
「いいんですか!じゃああのうさぎのお人形が欲しいです!」
「あのうさぎか、少し待ってくれ。」
そう言って先輩はお店の人に射的で使う銃をもらってうさぎを狙って弾を打った。
2発目でうさぎが倒れてゲットすることが出来た。
先輩はやはりなんでも出来るのだろうか…
「はい、これ。大事にしてあげてくれ。」
「か、かわいい!ありがとうございます!大事にしますね!」
先輩が取ってくれたこの可愛いうさぎちゃんは僕の部屋の棚に飾ろう。
僕はうさぎを抱っこして先輩と歩き出した。うさぎの人形は少し大きいので人にぶつからないか心配だ。
「そういえばもうすぐ文化祭ですよね。」
「あぁ。桃井は美術部の横断幕を描きたいと言っていたがどうなったんだ?」
「この間、部員みんなで描き始めて、3分の2くらいは書き終わったんです、描くのすっごく楽しいですよ!」
「そうなのか。やりたかったことが出来て、よかったな。個人の作品も描き始めたのか?」
夏休みが終わって、テストが終わればすぐに文化祭だ。美術部ではもう既に準備が始まっていた。
美術部員は、横断幕があってほかよりも時間がかかる、だから夏休みが始まるとすぐに作業に入るのだ。
それに、個人でも作品を描かなければいけなくて、人によって作品のサイズは違うが、最低でも1ヶ月はかかる、早めに描き始めないと間に合わなくなってしまう。
「個人の作品も描き始めて、半分は描き終わったんです。大きめの作品なので少し大変だけど楽しくて、早く先輩に見て欲しいんです!」
「あぁ、すごく楽しみにしているよ。…大きめの作品って、どのくらいのサイズなんだ?あんまり大きいと運ぶのが大変そうだか、」
「えっと、162cm×112cmくらいですかね。大きくて1人じゃ運べないので先生とかにも手伝ってもらって運んでます。」
「……桃井と同じくらいか、大きな。」
「でもやりがいがあって楽しいです!」
僕達はその後も文化祭の話で盛り上がった。
時間が過ぎるのがあっという間だ。夏祭りに来てからもう3時間がたっていた。
もうそろそろお祭りも終わりそうな時間になり、今日はここで解散することになった。
「じゃあ、帰るか……次会えるのは夏休み明けだな、それに文化祭の準備が始まったらあまり会えなくなるな。」
「そうですね…僕、先輩のクラスにお弁当持って会いに行きますね!」
「あぁ。青川も喜ぶだろうし、ぜひ来てくれ。
それじゃあまた、学校でな。」
あと数日で夏休みが終わる。そしたらテストが始まって、その後は各クラスの文化祭準備、なかなか先輩に会えなくなってしまう。
寂しいが、全く会えなくなるわけじゃない、時間を見つけて会いに行こう。
それに僕は、文化祭で先輩に伝えたいことがあるんだ…………そのためにも文化祭の準備を頑張らなきゃいけない。
作品の提出日は近い、明日からまた気合を入れて頑張ろう。
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