星の光と

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学校の登校には小振りのトートバックを一つ綺麗にたたみスクールバックに入れている。 そのトートバッグを使わず持ち帰る時もあるが、 今日はそのトートバッグに真新しい消しゴムとペンケースが入っている。 トートバックに手を入れ中を漁ると色付きの薬用リップが三本と保湿クリームが出てきた。 まだある。 手のひらに乗る位の花柄の筒状のプラスチックケース。 何だろう? 裏側に書いてある細かい文字を見る。 「…保湿クリームか」 「何々?お姉ちゃん。それ、何?」 気付けば妹がトートバックの中を覗き見している。 「こら。人のバックの中を覗き見するなって。行儀が悪いよ」 妹を横目で見ると、素直にごめんと返事が返ってくる。 反省を口にはするが、妹の瞳はキラキラしたままだ。 「これ?手に塗るクリーム」 「違うよ。そのポーチみたいなの」 妹は私の手にしている保湿クリームではなく、トートバッグに入っているペンケースを指さしている。 目敏い妹に思わず笑いが込み上げる。 「何だ、こっちね?筆箱だよ。ポーチみたいだけどね」 私はペンケースを妹に差し出した。 「もしかして、ミキに買ってきてくれたの?」 そう言いながら、妹の頬はほのかにピンク色に染まり、瞳はさらに輝きを増した。 「えっ…、あぁ…。うん。まぁね。そう。あんたに買ってきた」 「本当に?!うぁぁ。こういうの欲しかったんだ!」 「それ、ちょっと高いんだよ」 「知ってるよ!今、流行っているのだもん!」 私からペンケースを受け取ると、花を形どった金色のチャックを何度も開閉し動かしている。 妹は学校、いや全国の小中学校の女子の中で流行り始めてきたのだと熱心に教えてくれた。 勿論、高校生の中でも流行っているからよく知っている。 ペンケースを大事そうに胸に抱えて、ランドセルに向かう妹の後ろ姿は事の他可愛い。 …そうだ。 これは、妹の為に買ってきたものだ。 自分自身がどれほど欲しいと願った品物でもない。 そうだ。 [妹に買ってきた] 頭の中で何度も何度も言い聞かせる。
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