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シーラカンスで下痢
パーシヴァルが原始時代に転移して3日目。
彼は全裸だった。
「他に人間がいないのだから何も隠す必要はあるまい! すっきりして爽快だ!!!」
とはいえ走ったりかがんだりしたときに下半身のものが邪魔になることがあった。パーシヴァルのソレはそこそこ大きかった。
仕方がないのでそこらへんに生えている木の幹から外側の部分を剥ぎ取り、なめして柔らかい帯に仕立てる。
それを下半身にくるくると巻く。『これで解決!原始時代生活百科事典』曰く「フンドシスタイル」だそうだ。
これだとパーシヴァルのパーシーが暴れることもなく快適に過ごすことができた。
服装はこれで完成。
次に食事。
川や海には魚がたくさん泳いでおり、原始時代に転移した初日にはロンの槍を投げて巨大な魚をゲットした。
8つのひれを持った魚で、目が落ちくぼんで白っぽい体をしている。
さっそく焼いて食べたが、その日パーシヴァルは魔族との戦争よりも恐ろしい下痢を経験した。
不味い。
こんなに不味い魚がいるのかと思うほど不味かった。
とにかくヌルヌルしていて、口に含んだだけで不快感を覚えた。
だが、無駄な勇気を奮って食べてしまうのがパーシヴァルという男だ。
結果、翌日は全く動くことができなかった。
後日『これで解決!原始時代生活百科事典』を見てみたら、シーラカンスという魚だと分かった。
パーシヴァルはこのページを破った。
その後、魚については繊細になったパーシヴァル。
事典で食べられるかどうかを事前に確認し、比較的簡単に採れる魚を複数仕留め、木と木の間に縄でつるして天日干しにした。
こうすることで数日間食糧が採れない場合でも保存食として残しておくことができる。
そのほか赤い木の実や青色の酸っぱい小さな実も主食として適していた。
とはいえ魚や肉を食べないと力が入らなくなってしまうので、大きな鳥やツノシカなどを見つけては人間離れした俊足で追いかけ、ロンの槍で見事に仕留めるのであった。
「そういえばまだプテラノドンは見かけていないな」
(もうちょっと別の場所に行ったら会えるんじゃないか)
確かにロンのいう通りだった。生活に慣れてきたら少し遠出をして恐竜を探しにいこうと思う。
さて、最後は住居だ。
いつまでも青空の下で暮らすわけにはいかない。
「ふむ、こういう家がいいな」
(ログハウスか)
人間と槍は百科事典を覗き込んでは「広いお風呂が欲しい」「金色のライオンの口からお湯が出てくるタイプに憧れる」など理想の家談義にキャッキャしていた。
「よし!まずは資材の確保だ。ロン、久しぶりに君の本気を見せてくれ」
(ふっ、パーシーの頼みとあったら一肌脱ぐしかないな)
フンドシ一丁のパーシヴァルは、槍を担いで近くの森へ出かけた。
あたり一面、自分の身長よりも巨大な木ばかり。
これを建築用資材に利用するのだ。
「今こそ聖槍ロンゴミニアドの真の力を解放せん!! Divine Dragon's Roar(神竜の咆哮) !!」
すべての空気が停滞しあたりが静寂に包まれた次の瞬間、巨大な竜巻がパーシヴァルとロンゴミニアドを中心として発生し、そのまま風の刃となって恐ろしいスピードで周囲の木々を切り刻んでいった。
パーシヴァルの半径50メートルほど。
森だった部分は視界良好になり、切り刻まれた木々の資材がゴロゴロと転がっている状態となった。
「少し切りすぎたかな」
(かまへんかまへん)
「これを組み立てて家を………」
パーシヴァルは黙った。
後ろに巨大な生き物の気配を感じる。
これは……今までに感じたことのない大きさの生物。しかもかなりの凶暴性を持つ。
もしや―――………!
背後から風を受け、パーシヴァルはその場から勢いよくジャンプした。
数秒前までパーシヴァルのいた場所の大地が大きく抉られている。
改めて生き物と対峙する。
それは巨大で鋭い牙を持つ二足歩行の生物。長く重厚な尻尾をブルンと震わせている。
パーシヴァルが初めて出会った恐竜だった。
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