希望への道

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「何だ?」  高山が珍しく怯んだような顔をする。私は僅かに心が軽くなるのを感じながら、口を開いた。 「高山君、お願いがあるんだけど」 「……言っておくが、付き合って欲しいとかそういった類の願いは」 「そういうことじゃないの」  高山の言葉を遮り、私はその頼み事を口にした。 「明日の日直、代わってくれない?」 「……は?」 「お願い。私、今ちょっと風邪気味で、明日早退して病院に行く予定なの」  狩野の真似をして、代わってくれないと命はないと思え、という気持ちを込めて目に力を込める。  効果があったかは分からないけれど、高山は目を逸らして、あっさり頷いた。 「まあ、別にいいけど。この絵ももうすぐ完成するし、次の作品に移るには時間がいるからな」 「ありがとう」  もうこちらを見向きもしない高山に頭を下げて、私は美術室を後にする。  廊下を歩いていると、窓から吹き込む風が私を応援するように背中を押してくれている気がした。  誰もいない、暗くなりつつある廊下は、これから始まる痛みを表しているようで、ぶれて歪んだ。
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