変わってしまった

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変わってしまった

先日、同級生が亡くなった。不幸な交通事故だった。 その子は同じクラスだった。顔も、声も、覚えていない。一度だって会話したことがない子だった。 ただ、カバンに大きなキーホルダーを付けていた。そのキャラクターは自分も好きなものだった。だから、キーホルダーが揺れるカバンに触れる手だとか、腕だとか、そこに繋がる肩だとか、カバンを乗せた膝だとか。そういう体の一部分だけをやけに覚えていた。 その子は外がよく見える窓際の席に座っていた。何故か、雨がよく似合う子だったと思う。 一度も話したことがないまま、その子はいなくなってしまった。もういないその子を過去に置き去りにして、現実はどんどん未来へ進んでいく。 そうやって、いつかは消えてしまうのだろうな。そうぼんやりと思っていた。 お通夜もお葬式も、火葬さえ終わったはずなのに、何故かご両親は遺品を取りに学校を訪れることはなかった。どうやらお二人揃って体調を崩してしまったらしい。先生たちはご両親に同情し、引き取りはいつでもいいと伝えてあるらしかった。 一部の生徒には不満もあるみたいだけど、大半は納得して全てそのままにしてあった。 不満とは違うか。自分もそうだったけど、亡くなった人の遺品が生前と変わらず在り続けることに薄気味悪さを感じていた。 そんなこと、大人に言っても伝わらないだろう。文句も言えないまま、その子の荷物はそこに在り続けた。 変な言い方をすると、いつでも帰ってきてもいい状態。 とんでもない。三途の川を渡ったら戻っちゃいけない。切符は片道しか用意されていないんだから。 その子は逝った。川を渡った。 ちゃんと、おくったんだ。 だから、もう、いない。 いないんだよ。 いるはず、ないんだよ。 雨が降っている。 あの日も雨だった。 その子が世界から消えたあの日も、雨が降っていた。
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