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「紗那ちゃん、今日は何、食べようか」
「うーん、ハンバーグ!」
繋いでいる手をゆらゆらと揺らしながら、五歳の娘が笑顔で応えてくれた。まだ小さく、柔らかい手は頼りなくて、私が守ってあげなくちゃ、と思う。
「じゃあ、ハンバーグはくまさんにしようかな?」
「やった! あたし、お手伝いできるよ。パパのくまさんハンバーグ、あたしが作ってあげる!」
紗那は目をキラキラさせて、スキップしそうになるのを頑張って堪えている。そんな様子がかわいくて、私は思わず笑ってしまった。
ああ、なんて幸せなんだろう。
愛する娘が笑顔でいてくれる。それだけで、こんなにも幸せを実感できる。家族は私の宝物で、絶対に失いたくない存在。
それは当たり前のことで、特に意識したことはなかった。私が実感したのは、ごく最近のことだった。
「ママ、デザートも買っていい?」
物思いにふけりそうな私の意識を、紗那が現実に戻してくれた。店内には陽気な音楽が流れ、時折、特売商品についてアナウンスが聞こえてくる。
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