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「千尋、頼もしくなったな」
「はい!」
「今後とも、よろしく頼むぞ」
「はい!」
「大学で、待ってる。また、ルームシェアをしよう」
「え……」
ずっと良い返事だった千尋が、急に困惑したので、弦は慌てた。
「い、嫌なら無理にとは、言わんが」
「そんな。嫌なわけない。……いいんですか? また、一緒に暮らしても」
「もちろんだ。首を長くして、待ってるぞ」
途端に、千尋の目から涙がどっと溢れ出した。
「大会とか……応援に行きます! いっぱい勉強して……先輩の専属トレーナーに……!」
「ありがとう。ありがとう、千尋。頼りにしてるぞ」
「はい……はい!」
涙の中にも力強く、光ある未来に向けてその腕を伸ばす、弦と千尋。
二人の姿に、隠れてノゾキをしていた坂井は感動していた。
「やだ。なンか、私まで泣けてきちゃった……」
彼らは、崇高で清らかな、侵しがたい純愛を奏でているのだ。
「お互いに成長し、高め合える関係。……最高ね!」
邪魔をしては悪いと、彼女は静かにその場から去った。
「たとえ遠く離れていても、俺たちは繋がっているぞ。千尋」
「はい。電話しますね。メールも」
「あ、いや。そういう意味ではなく……」
離れても、弦と千尋の心の距離は、近い。
寂しいより、晴れやかな気持ちで、二人は新しいスタートラインに立っていた。
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