第九章 卒業おめでとうございます、弦先輩!

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「千尋、頼もしくなったな」 「はい!」 「今後とも、よろしく頼むぞ」 「はい!」 「大学で、待ってる。また、ルームシェアをしよう」 「え……」  ずっと良い返事だった千尋が、急に困惑したので、弦は慌てた。 「い、嫌なら無理にとは、言わんが」 「そんな。嫌なわけない。……いいんですか? また、一緒に暮らしても」 「もちろんだ。首を長くして、待ってるぞ」  途端に、千尋の目から涙がどっと溢れ出した。 「大会とか……応援に行きます! いっぱい勉強して……先輩の専属トレーナーに……!」 「ありがとう。ありがとう、千尋。頼りにしてるぞ」 「はい……はい!」  涙の中にも力強く、光ある未来に向けてその腕を伸ばす、弦と千尋。  二人の姿に、隠れてノゾキをしていた坂井は感動していた。 「やだ。なンか、私まで泣けてきちゃった……」  彼らは、崇高で清らかな、侵しがたい純愛を奏でているのだ。 「お互いに成長し、高め合える関係。……最高ね!」  邪魔をしては悪いと、彼女は静かにその場から去った。 「たとえ遠く離れていても、俺たちは繋がっているぞ。千尋」 「はい。電話しますね。メールも」 「あ、いや。そういう意味ではなく……」  離れても、弦と千尋の心の距離は、近い。  寂しいより、晴れやかな気持ちで、二人は新しいスタートラインに立っていた。
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