第一章 弦先輩! お風呂から上がったらパンツくらい穿いてください!

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第一章 弦先輩! お風呂から上がったらパンツくらい穿いてください!

 私立・北陽(ほくよう)高等学校。  医師や弁護士を親に持つ生徒も通う、この地区では割と偏差値の高い学校だ。  白亜の校舎に、緑豊かな中庭。  広いグラウンドに、最新の学習設備。  地域の中学生から、憧れの目で見られている、学び舎だ。  そこから500mほど離れた坂を登ると、男子寮が見えてくる。  その一室から、とある男子生徒二人のストーリーは始まった。  ルームメイトと二名一組で暮らすようにできている、ワンルーム。  掃除整頓が行き届いており、花など活けて飾ってある。  住まいの主は、繊細な心の持ち主らしいことが、うかがえる。  だが、その繊細な心の持ち主は今、それをかなぐり捨てて、声を限りに叫んでいた。 「弦先輩! お風呂から上がったら、パンツくらい穿いてください! 何度も言ってるでしょ、もう!」  そう怒鳴り、河島 千尋(かわしま ちひろ)はルームメイトの先輩・海江田 弦(かいえだ げん)に向かってトランクスを投げつけた。  しかし弦は、はなからキャッチする気などない。  全裸のまま腰に手を当て、紙パックに直接口を当て、牛乳をぐいぐい飲んでいるのだ。
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