5 「弟」の一歩先へ

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 ハリスはカイの頭をわしゃわしゃと撫でまわし、明るい声で彼に告げた。 「ありがとうな、カイ。君はオレの自慢の息子だ」 「……!」 「全く、ニュアージュに奴隷制度なんてなければなあ。カイになら、ラニアを託せるっていうのに」 「それって……」 「ははは!まあ、まだ先の話だけどな」  ハリスはカイから手を離し、部屋のドアに向かって歩いて行く。 「お父さん、俺……!」  部屋を出ていこうとする父の背中に、カイは大きく呼び掛ける。 「俺、ラニのこと守るよ!いつまでも、ずっと……ラニが笑顔でいられるように!」  父の信頼に応えたくて、咄嗟に出た言葉だった。  でも、本心に違いなかった。  俺はラニを守りたい。  メルシエ家を守りたい。  俺を拾ってくれた大切な人を、守りたい……。  カイの思いを受け取ったのか、ハリスは満面の笑みを浮かべながら振り返った。 「おう!頼んだぞ、カイ!」  父にしっかりと頷き、その背中を見送る。  彼から貰った鞄の肩ひもをしっかりと握り、この約束を守れるように強くなろうと、カイは心に決めた。
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