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ハリスはカイの頭をわしゃわしゃと撫でまわし、明るい声で彼に告げた。
「ありがとうな、カイ。君はオレの自慢の息子だ」
「……!」
「全く、ニュアージュに奴隷制度なんてなければなあ。カイになら、ラニアを託せるっていうのに」
「それって……」
「ははは!まあ、まだ先の話だけどな」
ハリスはカイから手を離し、部屋のドアに向かって歩いて行く。
「お父さん、俺……!」
部屋を出ていこうとする父の背中に、カイは大きく呼び掛ける。
「俺、ラニのこと守るよ!いつまでも、ずっと……ラニが笑顔でいられるように!」
父の信頼に応えたくて、咄嗟に出た言葉だった。
でも、本心に違いなかった。
俺はラニを守りたい。
メルシエ家を守りたい。
俺を拾ってくれた大切な人を、守りたい……。
カイの思いを受け取ったのか、ハリスは満面の笑みを浮かべながら振り返った。
「おう!頼んだぞ、カイ!」
父にしっかりと頷き、その背中を見送る。
彼から貰った鞄の肩ひもをしっかりと握り、この約束を守れるように強くなろうと、カイは心に決めた。
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