6 夜明け前の逃避行

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 ラニアの肩が震える。涙が頬を伝って床に落ちていく。  カイはそれを見て、すぐにハッとした。  守らなくては。ラニを、守らなくては! 「ラニ!」  カイはラニアの肩を掴んで呼びかけた。 「ラニ、早く逃げよう!」 「でも、パパとママが……」  虚ろな目で自分を見上げるラニアの瞳を、カイは力強く見つめる。 「ラニ」  カイは、声が震えそうになるのを必死に堪えて彼女を呼んだ。 「逃げなきゃダメだ。生きなきゃダメだ。苦しいかもしれないし、悲しいかもしれないけど……」  カイは、ラニアを強く抱き締めながら、口を開く。 「絶対に、俺が守る。ラニは、俺が守るから……!」  家がパキパキと音を立て始める。炎の熱さが伝わってきて、カイのこめかみを汗が伝った。 「カイ……」  ラニアはカイを抱き締め返し、頷いた。 「……逃げよう。あたしも、あんたのこと絶対に守る」  2人はお互いを支え合いながら立ち上がり、両親の亡骸に短く告げる。 「いってきます」  そう言い残し、2人は裏口から家を飛び出した。
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