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火の手が回っていなかった裏口から外に逃げ出し、家の正面に回り込もうとしたカイは玄関前の光景を見て足を止めた。
「あれは、雲の紋章付きの鎧……まさか、王国軍の兵士達……!?」
銀色の鎧兜に身を包んだ兵士達は、家の消火をするでもなく、辺りを忙しなく見渡している。
「家主と妻は殺した!後は子どもだけだ!」
「奴隷を擁護し王国の秩序を乱す反乱分子だ!何としても見つけ出せ!」
口々にそう言いながら、兵士達は剣を片手に辺りを見回りしていた。
察するに、昼間ラニアを襲おうとして返り討ちにあったジャックが、カイのことを告げ口したのだろう。
「あの人達が、パパとママを……」
ラニアは声を震わせながら、カイの背中より兵士達を睨みつける。
その瞳は、涙で潤んでいた。
「許せない……、許せない……!」
「ラニ、気持ちは分かるけど、今はそれどころじゃない……」
「気持ちが分かるなら怒らせてよ!あんただって許せないでしょ!!」
ラニアの大きな声が、辺りに響き渡った。
そして、その声は兵士達の耳にも届いたのだった。
「居たぞ!あそこだ!」
「殺せ!!」
兵士達がこちらに向かって走ってくる。カイは咄嗟にラニアの手を握って、家の側道から家の裏の路地に駆け込んだ。
「ラニ、逃げるぞ!」
「か、カイ……!待って!」
体勢を崩しながらも、ラニアはカイに手を引かれてバタバタ走り出す。
「待て!!」
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