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路地は狭く、人数の多い兵士達はもたつきながら2人を追うしかなかった。
2人と兵士達の距離が広がっていく。これなら逃げ切れる……カイはそう確信した。
しかし、ニュアージュの神は2人を見放すのだった。
「行き止まり……!」
路地の先は、小さな空き地。外に通じる道では、なかった。
「そんな……」
ガチャガチャと鎧が動く音が迫る。重たい足音が大きくなる。
振り返ると、兵士達が空き地に辿り着いていた。
「残念だったな」
先頭にいる兵士が、カイに憎悪の眼差しを向ける。
「この奴隷が。お前がいなかったら、お前が人間に楯突かなかったら、お前の買い手は死ななかったんだ」
兵士の剣先が、カイに向けられる。
「全部、お前のせいだ」
「…………!」
その言葉が、カイの心を深く突き刺した。
それこそ、その兵士が持つ剣のように。
胸が焼けるように痛い。目の奥が熱い。頭の中をドロドロした後悔の感情が占める。
俺さえ居なければメルシエ家はこんなことにはならなかった。
お父さんもお母さんも死ななかった。
ラニアもこんな目には遭わなかった。
「俺の、せい、か…………」
兵士に、何も言い返せなかった。
カイの心が、母に捨てられた時のような絶望の色に染め上げられる。
「……ごめん、ラニ」
自分の隣にいる彼女に、か細い声で謝ることしかできなかった。
ラニアの手が、自分の手から離れる。それをただ、拒絶の証として受け取ることしかできなかった。
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