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また、失くした。
全て、失くした。
自分に、帰る家なんてなかった。家族だなんて……ラニを守りたいだなんて、思い上がってはいけなかったんだ。
カイがそう絶望していた、そんな中。
「ごめんだなんて言わないで」
ラニアは、ゆっくりとカイの前に出ていき、兵士達から彼を守るように両手を広げた。
「カイを買ったのは私。弟にしたのも私。奴隷を弟にしたらいけなかったのかもしれない。国王様は許してくれないのかもしれない。……でも」
ラニアは兵士達を睨みつけ、大きく口を開けた。
「後悔は、してない!!」
その気迫に、兵士達が怯む。
「奴隷商を見た時、あたし、この子のこと放っておけなかった!蹴られて、嗤われて、唾をかけられて……こんなの、人間が人間にする仕打ちじゃないでしょ!!国の決まりに背いてたとしても、あたしはそんなの認めない!!」
ラニアの声が、カイの心に響き渡る。
そうだ、ラニアは……こういう人だ。この国に珍しい……温かい、人だ。
そんな彼女だから……俺は、守れたらって、思ったんだ……。
「貴様、ニュアージュ王国に楯突いたな……!」
兵士達がラニアに向かって剣を構える。
「反乱分子は、切り捨てるのみだ!!」
先頭にいた兵士が、ラニアに迫りその剣を振り下ろす。
その一瞬が、カイには酷く長く感じられた。
大好きな人の死の瞬間を目前にし、カイの中で何かが弾けた。
「ラニに、手を出すなーーッ!!」
カイがそう叫んだ刹那。
パキィィッ!
兵士が……ラニアを襲おうとしていた全てが、凍りついたのだ。
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