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「え……?」
それに驚く間もなく、カイはその場に崩れ落ちた。
「……!カイ!!」
ラニアは倒れたカイを慌てて抱える。
「カイ!!しっかりして!!」
何度も呼びかけるが、カイは目を閉ざしたまま返事をしない。
ラニアの頭に「死」の文字が過ぎる。
「うそ……うそ、うそ、うそ!!やだ!ダメ!死んじゃダメ!!」
ラニアは涙を零しながら、必死にカイの名前を呼び続けた。
しかし、カイは目を覚まさない。
大切な弟が、目を覚まさない。
「どうしよう……やだよ、やだ……!あんたが、居ないと……カイが生きてないと、やだよ……!」
ラニアは肩を震わせながら、何も言わずに動かなくなったカイを潤んだ視界に映していた。
……その時。
「彼は死んでないよ」
まだ声変わりのしきっていない、柔らかな少年の声が聞こえた。
フード付きの白いローブを身にまとった少年は、ラニアに歩み寄り、その肩に手を置く。
「彼も僕と同じだけさ」
「え……?」
ラニアは恐る恐る少年の顔を覗き込む。
すると、青空を切り抜いたようなブルーの瞳と目が合った。
「ここじゃなんだから、僕達のアジトに行こう。……アエラ」
少年が振り返った先には、いつの間にか、もう1人ローブ姿の人間が立っていた。
「彼を運んでくれ」
「分かりました」
もう1人のローブ姿の人間から、低く落ち着いた女性の声が聞こえた。
彼女は、少年に言われた通りカイを運ぼうと彼の身体に手を伸ばす。
その美しい白い手を、ラニアは強くはたいた。
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