6 夜明け前の逃避行

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「え……?」  それに驚く間もなく、カイはその場に崩れ落ちた。 「……!カイ!!」  ラニアは倒れたカイを慌てて抱える。 「カイ!!しっかりして!!」  何度も呼びかけるが、カイは目を閉ざしたまま返事をしない。  ラニアの頭に「死」の文字が過ぎる。 「うそ……うそ、うそ、うそ!!やだ!ダメ!死んじゃダメ!!」  ラニアは涙を零しながら、必死にカイの名前を呼び続けた。  しかし、カイは目を覚まさない。  大切な弟が、目を覚まさない。 「どうしよう……やだよ、やだ……!あんたが、居ないと……カイが生きてないと、やだよ……!」  ラニアは肩を震わせながら、何も言わずに動かなくなったカイを潤んだ視界に映していた。  ……その時。 「彼は死んでないよ」  まだ声変わりのしきっていない、柔らかな少年の声が聞こえた。  フード付きの白いローブを身にまとった少年は、ラニアに歩み寄り、その肩に手を置く。 「彼も僕と同じだけさ」 「え……?」  ラニアは恐る恐る少年の顔を覗き込む。  すると、青空を切り抜いたようなブルーの瞳と目が合った。 「ここじゃなんだから、アジトに行こう。……アエラ」  少年が振り返った先には、いつの間にか、もう1人ローブ姿の人間が立っていた。 「彼を運んでくれ」 「分かりました」  もう1人のローブ姿の人間から、低く落ち着いた女性の声が聞こえた。  彼女は、少年に言われた通りカイを運ぼうと彼の身体に手を伸ばす。  その美しい白い手を、ラニアは強くはたいた。
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