前編

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前編

 夕方には(みぞれ)だった空も、夜中に雪へと変わったようだ。  今朝は辺り一面が、雪景色に変わっている。  雪は深く降り積もり、眼前には真っ白な世界が広がっていた。  まだ何者にも踏み固められていない、足跡のひとつもない銀世界だ。  外へ一歩出るなり、寒々とした風が私の頬を刺したが、寝起きで暖まった身体に、これくらいの痛さは心地良い。  大きく深呼吸をすると、冷気が肺を押し広げた。  静かに降り続く雪は、音すら吸収するようだ。無音、白だけの世界。  空も白、目の前にあるはずの公園の遊具も全て白。  園内へ、一目散に駆け入った。初めての足跡は私が残すのだ!  一通り走り終えると息を切らした私は、降雪前であれば砂場があったはずの平坦な場に寝そべった。  両腕・両足を広げ大の字に。  背面が雪に沈む。  空からは止むことのない粉雪が、私の身体前面に薄く積もり始める。  まだ私が小さかった頃、家族で頻繁に訪れたのがこの公園だ。  まるで昨日のことのように、ありありと思い出してしまった。  雪上で行うキャッチボールやフリスビーは、足元が緩いと滑り易い。  しかしそのせいで仮にバランスを崩し倒れたとしても、そんな私を受け止める雪は優しいのだ。  かまくらや雪だるまも作った、笑顔の絶えない家庭に育った。
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