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僕は背が低くて癖っ毛の茶の髪にシルバーの瞳、そして何よりも天上の小人も羨むようなソプラノの声をしているからだ。
(僕が命を助けてやったのに、僕の神々しい姿を忘れるなんて。なんて図々しいやつ)
僕はちょっぴりムッとしたから、やっぱり絶対に名乗り出てやるものかと思った。しかし、強そうに見えた彼女はあまりにも寂しそうな顔をしてこう言ったのだ。
「あの。精霊様は気まぐれで、もし私に会っても知らないフリをしたりするのでしょうか?」
それは人間界の女王の顔ではなく、一人の女の子の顔だった。切実な願い。胸がチクチクする。この気持ちを僕も知ってる。僕だってずっと逢いたかったのだから。
「あの日君を助けたのはーー」
しかし、僕が何かを言う前に彼女が声を上げてあらぬ方向へと駆け出したのだ。
「あ、あの方! あの方です!」
「え?」
僕は呆然としたまま雪の中に取り残された。
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