II

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「雪の王、エルマー様。私は人間界を統べる帝国の女王、イゾルデと申します。雪の精霊様方との友好を望みます」  イゾルデと名乗った女は燃えるような赤い髪をしていた。精悍な顔つきと鍛えられたしなやかな身体に兜や鎧を纏った姿は人間界の女王が武力で他を圧倒したことを示していた。 (そういえばあの子も赤い髪をしていたな。あの子が大きくなったなら、もっとお姫様のようなふわふわした子になるに違いないけれど)  間違ってもイゾルデのようなゴツゴツした女性にはなっていないだろう。  人間と和平を結ぶことに異存はない。僕はイゾルデの側近である若いフードの錬金術師とやらが用意した和平証書に氷の魔法でサインをした。  そして、あの子と同じ髪色の人の子に少しだけサービスをしてやろうと思い立ったのだ。 「人の子よ、ここまで来た褒美だ。雪の王たる僕が一つだけ願いを叶えてやろう」
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