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イゾルデは少し前置きが長くなりますがと断って、僕に昔話を始めた。
「実は私、昔とある精霊様に助けられたことがあるのです」
その話は雪の女王が人間界を巻き込んだ大雪を降らせた年に、幼子だった自分の命を雪の精霊が救ってくれたというものだった。そしてペンダントを雪の精霊が持っていったという。
僕は頭が混乱してきた。
その思い出は僕が持っている思い出と全く同じものだったからだ。だけど、雪の女王が大雪を降らせたのは最近の話。僕は側に立っているヨルクに耳打ちする。
「計算が合わないんだけど」
「馬鹿かお前は。俺たちの3年は人間にとっての15年だ」
15年。ということは、あの日幼かった彼女は20歳程度になっていてもおかしくない。つまり目の前の大きな女があのときの少女の成長した姿なのだ。
僕は正直、ガッカリした。
あの頃のふっくらモチモチした可愛さは欠片もない、鋭い眼光を散らすこの女が僕の初恋だったなんて。思い出補正にも程がある。
(……知りたくなかったなぁ)
しょげる僕はしぶしぶ名乗り出る心づもりをしていた。しかし、イゾルデの次のセリフで僕は名乗り出ることが出来なくなってしまった。
「その精霊様に会ってペンダントーー人間界の秘宝を返していただきたいのです」
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