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III
「やばいやばいやばいペンダントなんて貰わなきゃ良かった」
僕は自室で一人、頭を抱えていた。
「まさか僕のせいで人間界が戦争になっていたなんて。こんなことがお母様に知られたらどんな目に遭わされることか」
あの後、なんとか平静を装って「その雪の精霊は探しておく」と場を誤魔化すことができた。人間界に降り始めた大雪のせいで使者たちは数日雪の国に滞在するらしい。その間にこの事実を隠蔽しなければ。
ヨルクは気がついただろうか。気がついたに決まっている。ヨルクは僕の側近だけれども、お母様の命令で僕の側近をやっているだけだ。お母様に密告されたらどうしよう。
(ずっとこのペンダントを見る度に思い出に浸っていたのに......)
僕は鍵付きの箱に大事にしまっているペンダントを取り出して眺めた。六角形のまるで雪のようなガラス細工は確かに秘宝と言われても違和感はない。時折ガラスがうねるように見えていたのは今思うと魔力が篭っていたからなのかもしれない。
「こっそり持ち主の元に帰る魔法とか掛けようかな」
僕は試しに少しだけ魔法をかけてみた。
「あ”っ」
ペンダントは弾け跳び、氷の床にガラスの破片が散らばった。
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