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それからというもの、起きては、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるシュネーに辛く当たる日々が続く俺。
(自分でも、こんなのは間違ってるって分かってる……)
でも、理不尽に異世界に召喚された絶望を――恋人と二度と逢えない悲しみを埋める方法を、俺は他に知らなかった。
(あの日の夜……本当は、雪にプロポーズするつもりだったんだ)
今の日本では、当然、同性同士の結婚なんて認められていない。
だが、これは俺の気持ちの問題だった。
例え、世間や国が認めなかろうと、俺の伴侶は雪だけだ。
その気持ちを――覚悟を、ちゃんと形にしたくて。
「だから、指輪まで用意したのにな……」
俺は、ズボンのポケットに入ったままになっていたリングケースを取り出すと、中にしまわれていた指輪をそっと撫でる。
もう嵌める者のいなくなってしまったシルバーの指輪。
そのセンターのダイヤ部分に俺の涙が落ち、静かにアーム部分を滑り落ちて行った。
まるで、共に泣いているかの様に――。
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