雷鳴よ、俺に轟け

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俺の名前は、(かなえ) (しゅう)。 この、ヴィジュアル系ボーイズバンド『銀の雷鳴』のリーダーにして、今、日本で一番人気と勢いのあるボーカルだ。 トレードマークは、左目につけた黒い眼帯と、鮮やかに染め直した金色の短髪。 それに、カラコンで深紅に染まった左目である。 そんな俺は、冷めやらぬ興奮に身を任せる様に、所々アレンジを加えながら、ドーム中に歌声を響かせていく。 すると、途中――曲が大サビに差し掛かると同時、バンドのベースが俺の所にやって来た。 そうして、ごく自然に互いに背中合わせになるや、歌声を重ねる俺達。 そんな俺達の姿を見て、歓喜に沸き立つファン達が、より黄色い悲鳴じみた歓声を上げていく。 それが、耳に本当に心地いい。 俺達はそのまま――(ほとばし)る情熱と勢いのままに、アンコールまで突っ走った。 全身まで焼き尽くす様な熱狂の渦の中、全25曲の演奏を終える俺達。 こうして、俺達『銀の雷鳴』の10周年記念全国ライブツアーは満員御礼、大成功で幕を下ろした。
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