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「ユキ?」
俺に名前を呼ばれてきょとんと小首を傾げる雪。
(……嘘だろ?自分の名前が分からないのか?)
――まさか、あの事故に巻き込まれて、一時的に記憶喪失になっちまったとか?
嫌な想像がぐるぐると俺の頭の中を駆け巡る。
すると、雪が俺の方にしずしずと歩み寄って来た。
そうして、ベッドサイドにあった小さな木の椅子に腰かけると、ゆっくりと話しかけて来る。
「あの、ユキというのはどなたかのお名前でしょうか?」
「は?」
雪の放った台詞に、思わず言葉を失う俺。
と、俺が困惑しているのを察したのか――困った様に微笑みながら、雪が静かにこう告げた。
「あの、どなたかと勘違いをされている様ですが、私はこのエーデルシュタイン帝国の聖職者、シュネーと申します」
――は?エーデルシュタイン帝国?
俺は、一体何処に来ちまったんだ……?
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