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深夜の訪問者~その足跡は誰のもの?~
「わぁ~! ママ見て! 雪がふってきたよ!」
娘のそんな声に窓の外を見やると、真っ黒な空から幾つもの羽毛のような雪が降ってきているのが目に入った。道理で寒いはずだ。
「ねぇねぇ、つもるかな? つもるかな?」
「どうでしょうねぇ。随分と降ってはいるけど……」
言いながら、手早く雨戸を閉めカーテンもきっちりと閉じる。
冷気と雪とがほんの少しだけ室内に入り込んだけれども、エアコンの風ですぐに跡形もなく消えてしまう。
「ああっ!? もっと雪がふってるのみたいのに~!」
「……きちんと閉めておかないと、お部屋の中が寒くなっちゃうでしょう? それにほら、もう寝る時間よ。明日、雪が積もったら一緒に遊びましょう?」
「む~。ほんとのほんとにいっしょに遊んでね?」
「雪が積もったらね」
娘は、ほんの少しだけ拗ねた顔を見せつつも、そのままぐずることもなく、大人しく布団に潜り込んだ。
少し聞き分けが良すぎるきらいがあるけれども、良い子に育ってくれたと思う。娘が生まれてから九年。もう随分と大きくなった。
あの頃の私と、丁度同い年だ。
――そう言えば、あの時も夜半から雪が降り始めていたのだった。
そして翌朝には、外は一面の銀世界に変貌していた。太陽の光を受けてキラキラと白く輝く、美しすぎる世界に。
そこで私は見付けたのだ、あの「足あと」を。私の心に巣食う恐怖の根源となった、あの足あとを。
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