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私は早々に布団に潜り込み、父が寝付くまで寝たふりを決め込んだ。
当時、私と父は同じ部屋で寝ていたけれども、部屋の真ん中をカーテンで区切って、一応のプライバシーを確保していた。小学校中学年になりつつあった私に、父が気遣った結果だった。
――数時間後、うつらうつらしていると、カーテンの向こうで父が布団に入る気配があり、やがて穏やかな寝息が聞こえてきた。お酒が入っていたこともあってか、早々に寝入ってしまったらしい。
私は、常夜灯の薄明りだけを頼りに布団を抜け出し、そっと窓際へと近付いていった。
当時の我が家には、大きな窓が無かった。あるのは、明り取りの為の小さな窓が幾つか。それも、当時の私がギリギリ外を覗き込めるかどうかくらいの高さにあるものばかりだった。
寝室の窓も例外ではなく、私は外を眺める為にわざわざ椅子を窓際に置いて、踏み台代わりにすることにした。
ブランケットにくるまりながら椅子の上に立ち、寝室の窓にかかったカーテンをそっと開く。
窓には雨戸はなく、外側に丈夫な格子が付いているだけなので、すぐに外の風景と「こんにちは」が出来た。
外は静かだった。昼間に雪かきしたおかげで道路は奇麗なもので、防犯灯に照らされてアスファルトが鈍く輝いている。お向かいさんの玄関先には、私達が力を合わせて作り上げた大きな雪だるまが鎮座して、やや不細工な笑顔を浮かべていた。
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