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時刻はちょうど十二時を回ったところ。周囲には一切の人影が無く、どこか遠くで自動車のエンジン音が響くのみ。
私はガラス窓越しに襲い来る冷気に耐えながら、ひたすらに待った。あの足あとの主が今夜も現れることを祈りながら。
そのまま、どのくらいの時間が過ぎた頃だろうか。
眠気と寒気に負けて、私が椅子の上に立ったままうつらうつらし始めた、その時。
――カッカッカッカッ。
固い何かがアスファルトを叩く音が、外から聞こえて来た。明らかに誰かの足音だった。
目をこすってから、音がする方を必死に見やる。すると、防犯灯の頼りない明かりに照らされながら、大通りの方からこちらへと歩いてくる誰かの姿が見えた。
まだシルエットしか分からなかったけれども、髪は長く見える。背もあまり高くないので、恐らく女の人だ。
(やっぱり! きっとママだ!)
何の確証もなく、その時の私は人影が母であると確信してしまった。眠気で思考能力が落ちていたのもあるのだろうが、きっとそれだけ子供だったのだろう。
私はワクワクしながらその人影が我が家の前まで来るのを見守り――やがて絶句した。
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