序章

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 今時草むらに腰掛けてセンチメンタルごっこをしている間に勉強でもしていれば、ささやかな答案用紙を見ることは無いのだろうが、気付かないのが愚かである。  去年の一学期の実力模試の悲惨な結果を鑑み、高校卒業したら働こうかと思った矢先、父親に言われた言葉はこうだった。 「お前とくに取り柄とか才能とかないんだから、多少は勉強して学歴の箔くらいつけておきなさい」  カチンと来て言い返した。「うるさい舞う帆のように自由に生きる『舞帆』だ私は」と。「取り柄も才能も知識教養もないのに自らに()って何を選ぶんだお前」とカウンターを喰らったことを思い出し、「私何者になる気なんだろう」とぼんやり考えながら、微動だにしないテストの点数を睨み佇む。
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