邂逅

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 まだ七つほどの都会っ子だった私は勝気で、無謀だった。そして沢の段差に転落したらしかった。  登山では沢を下ると段差に嵌まり脱出できなくなる。なので、遭難した場合、沢伝いではなく頂上を目指せという教えには、そんな意味があるのだ。しかし、そんな危険を知ったのも大学に入ってからだ。  子供だった私は落下し雪溜まりに埋まったショックで意識朦朧(もうろう)となり、その後の記憶はすっぽり抜け落ちてしまっていた。ただ、朦朧とした意識の中で、白く暖かな陰に包まれ意識が遠のいていく漠然としたイメージだけがあった。その後どうやって帰宅し、日常に戻ったのかさえはっきりした記憶は残されていない。  その後、両親は別居し、私が十八を迎える頃に離婚した。母親に引き取られた私には、理由など知る(すべ)はなかった。
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