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消えゆく村
「こんな話でよかったんですかいのぅ?」
「えぇ、美談ですから挿話としていいかも知れませんね。なにか記録のようなものがあると助かるんですが」
「それなら、村の入り口に慰霊碑がありますよ」
「どなたか亡くなられたということですか?」
「お子さんが見つかった時、名前はなんと言うたか、あの若い仲居が抱いとったとですよ、自分の服の中でな。親御さんとの言い争いを見た者も居りましたし、無理に沢まで探しに降りて戻れんようになったんでしょう。ふもとの病院まで運ばれて、子供さんは助かりましたが……。それで、お子さんのご両親が慰霊碑を建てなさったそうです」
「たいした話もできませんで――」
「いいえ、お世話になりました。どうぞ、お元気で」
老婆も、来月にはふもとの介護施設に移るそうだ、この村は廃村となり営林署の資材置き場になるという。
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