村の歴史

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村の歴史

 この村最後の御宅を訪ね話を伺うのが、今回村を訪れた目的だ、手早く済ませて帰ろう。住人のおばあさんは七十年近く、他所(よそ)に出ることなく村で生きてきたという。村の歴史の生き証人といったところか。 「そうだねぇ。特にこれといった面白い話なんぞは特にありませなんだが……」 「何でもいいんですよ。スキー客で村が栄えた頃のこととか、当時はどんな感じだったとかっていう、そんな在り来たりなことでかまわないんです」  そうはいっても、日々季節をやり過ごすのが日課の、のんびりとした山間(やまあい)の村に何があるというのか。余所者の期待など図々しいのではないだろうか。この仕事を始めてからというもの、期待など何処かに置いてきてしまっていた。 「あぁ、こんな話しでもいいんですかねぇ? 私の若い頃、スキー客が事故に遭った話だけれども」 「事故? どなたか亡くなられたんですか?」
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