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「んー! やっぱり、気持ちいい!」
『ニャーン♪』
「やっぱ、沖縄の風はいいよなぁ!」
二人で買った車に乗り、沖縄の風に触れながら『大切なお客さん』を迎えに行く俺たち一向。
そんな車内はいつも通り、大好きな『懐メロ』が俺たちのドライブを彩ってくれている。
「この曲、ほんと好き!」
「ああ、俺も大好きだ」
「なら、一緒に歌っちゃう?」
「おっ! それ、ありだな! ほらっ! サビだぞ!」
二人でノリノリなサビを歌い、車内は盛り上がりを見せる。そして、クロもクロで楽しそうな鳴き声を上げている。
こんな幸せをこれからもずっと、噛み締めていきたいと願うばかりだ。
◇ ◇
「…あ、優太さん、あれじゃない?」
「ああ、そうだな!」
楽しいお迎えのドライブも終わり、お客さんが降り立つ飛行場へと辿り着いた俺たち。
「…あっ! 大輔さん…!」
「おおっ! 優太くんに一平くん! 久しぶりだなっ!」
「お久しぶりです! その節は、本当にありがとうございました!」
飛行場のロビーに姿を現したのは大輔さん。
そう『大切なお客さん』とは、大輔さんのことだった。
そして、どこかで『見たことのある男性』が大輔さんに寄り添っては「初めまして」と俺たちに声をかけてくれた。
「だ、大輔さん…ま、まさか…?」
「ああ、そのまさか! こいつが俺の『大切な人』で優太くんに一度だけ見せた『彼』だ」
「おい、こいつって言うな…ってかお前、なにしてん」
「え? ははっ! 何も聞こえねぇな〜?」
大切なお客さんの隣にいたのは、大切なお客さんの心から愛する人。聖なる夜にBARで過ごし、互いに『大好きな人』を披露しあったことは、俺と大輔さんしか知らないこと。
そして、俺と大輔さんがどこで知り合ったのかまでは、きっと彼は知らないのだろう。
大輔さんも大輔さんで『寂しさや苦しさ』を紛らわすためにあの『ハッテン場』へと足を運んでいたのだろうから。
「優太くん、そして一平くん…今日は招いてくれて本当にありがとう」
「いえ…むしろ、こんな遠くまで来てくれて、本当にありがとうございます」
「大輔さんの彼氏さんも長旅ありがとうございます、お疲れですよね?」
「いや、大丈夫だよ?…それより、俺さ、四人で行きたいところがあるんだけど、優太くん、一平くん、連れて行ってくれるかな?」
大輔さんの彼から吐き出される願い。
こちらから大輔さんを招いたわけだ。
それならば、大切な彼の『その願い』を俺たちは、叶えてあげるのみ。
俺と一平は「もちろん!」と声を合わせては、願いを受け入れ、大輔さんの彼が行きたいところへと四人仲良く、向かっていった。
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