エピローグ Esperanza 希望

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「ははっ! そんなに驚くなよっ!」 「お、驚きますよ! そりゃ!」  急な爆弾発言に驚かない人などいないだろう… 「…俺とこいつも、君たちの知らないところでやり取りを続けていたけれど、君たちから受ける『本当の気持ち』を胸に受け止めれば受け止めるほど、羨ましいという気持ちの裏に、このままではいけないって、強く心に想えるようになっていた」 「大輔の言う通り、君たちのことはやり取りの中で聞かされていたし、その度にこれからの人生を『短い時間』で大輔と過ごすのか、もっともっと『長い時間』を大輔と過ごすのか…考えるようになった」  大輔さんは以前『急がずに時が来る時まで』と話してくれていた。  けれど『人生という時間』は長いようで短い。  それを考えると、どれだけ『本当の気持ち』で繋がり合える人と『人生』という時間を過ごすことが出来るのか。  それは、人間である俺たちに決めることは、到底不可能なこと。    明日、この命が朽ちるかもしれない。  人生のタイムリミットは、誰にも分からない。  そんなリミットの中『大切な存在』だと思える人の傍にいれることは、決して当たり前なんかではなく、共に過ごすことが出来ない『辛さ』を俺たちは人一倍理解しているつもりだ。 「…やっと心の鍵を開けることが出来た…その勇気や希望が詰まった『鍵』を君たちが俺たちに与えてくれた」 「そして、君たちのおかげで俺たちは俺たちだけの『道』を歩んでいくことを決心することが出来た」 「それが互いに狭くて苦しくて、色んな壁や罠が仕掛けられていたとしても、二人で歩んでいこうと、互いに見つめ合うことが出来たんだ」  事の経緯を全て吐き出してくれた大輔さんと彼は、俺と一平に向けて今までに見たことがないほどの『幸せに満ちた笑顔』を振り撒いてくれた。  俺と一平は大輔さんに感謝をしてもしきれない程の恩のお陰で『二人だけの道』を切り拓き、今の幸せな生活を送ることが出来ている。  どんなことが大輔さんに対して、恩返しになるのだろうと考えていたけれど、見えないうちに大輔さんの心にも、彼の心にも『俺たちの気持ち』や『熱い想い』が届いていたようだ。  形としては、恩返しが出来ていなくても… 『想い』としての恩返しは、出来たのかな? 「大輔さん、今、幸せですか?」 「ああ、心の底から幸せだよ」 「一平くん? 優太くんといれて、幸せ?」 「はいっ! 本当に幸せです!」  四人揃い、顔を見合わせながら『本当の幸せ』を噛み締めあっては、笑顔が絶えない。  俺は君に恋をしてはいけない。  そんな想いから始まった苦しい恋は、色んな人と出会い、ある時は助けられ…ある時はもがき苦しみ、何度も何度も悲しい涙を流した。  それでも俺の心から『君』という存在は、掲示板で知り合ったあの日から、一度たりとも消えたことは無い。  君にこの想いが届かなくとも…  いや…届かない想いもあれば、きっと届く想いもある。  その想いが互いの心で灯火を消さない限り、決して届かない想いではないのだろう。  君に届いた『俺の本当の想い』  俺に届いた『君の本当の想い』  互いの心に『想い』が届きあった俺たちは、強い絆と愛で固く結ばれあい、これからもどんな道でも二人で乗り越えていく。  その決意と希望を胸に、ブルーラグーンのように輝く沖縄の海を四人で見つめ合いながら、俺たちの『本当の恋』が今、始まりの号令を鳴らした。   【完】
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