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第一章 君との出会い、感じたことの無い快楽
「はぁ…今日はハズレだな…」
七月の暑い日、俺は仕事の合間にネットの掲示板を眺めては、今日も良いヤツがいないかとスマホを握りしめ、検索をかけてみるけれど、自分好みのプロフィールが見当たらない。
俺が利用している掲示板には架空の名前と身長、体重、年齢が示され、『どこで会いたい』や『部屋に来ませんか』などとリアルタイムで各々募集がかかっている。もちろん、俺自身が募集をかけることも出来るわけだ。
そんな掲示板を利用する俺は、恥ずかしながらも性的欲求が人より強い。
自分から放たれるΩのフェロモンを武器に身体への快楽だけの為に、色んな男性に会ってみては、その場だけの関係を続けていた。
「はぁ…ダメだ、どれも会いたいと思えない」
プロフィールを物色していても、自分好みの人がいないことに俺は項垂れていた。
けれど、それならいつも通り自分で書き込んでみればいいんだと『架空の名前』と『本当のプロフィール』を入力し、募集をかけてみることにした。
身体を満たしてくれればいいけれど、どんなヤツでもいい訳じゃない。ヤリたいと思う人でなければこの身体は満たされない。
そんな、身勝手すぎる考えを理解しながらも、俺は掲示板へと一言書き込みを残した。
【この後、人気(ひとけ)の少ないAマートの駐車場でやりませんか?】
はぁ、書き込んじゃった…
でも、他の書き込みを見ていても、どうせ今日はいい人になんか出会えないよなぁ…
そんなことを思いながらも、快楽を満たして欲しかった俺は『誰か』からの返信を待ち続けていた。
…
……
ピコン!
書き込みをして五分足らずの事だった。
俺の書き込みに対して一通の返信が届く。
【興味があります! そして、気になります! これからお会い出来ないですか?】
俺の元へと辿り着いた送り主からの書き込み。
そして、送り主の名前とプロフィール。
『翔太…164-52-24』
さっき掲示板を物色していた時に『翔太』という名前の人は見つからず、こんなプロフィールもなかったはず。
もう一度、掲示板の書き込みを見返してみたものの、やっぱり見つからない。
ただ、プロフィール的に間違いなく俺の好みでタイプだ。快楽を満たすことが出来るのであればこの上ないと感じた俺は、翔太へ返信をする事にした。
『良ければ、よろしくお願いします』
その一言を書き込んだすぐだった。
『はいっ! 今、近くにいるので会いたいです!』
ほんとに俺が書き込んでから秒の出来事だった。いつもなら必ずといっていい程に書き込んでからラグが双方に生じ、数分は返って来ない。
もしくは釣り(弄んで会わない)が多く見られるのに、この速さは尋常じゃない。
ただ、俺に会いたいと言ってくれて、俺好みの子が満たしてくれるのであれば、この上ない喜びだというわけだ。俺も翔太から届いた書き込みへと即座に返信をし、待ち合わせの駐車場で彼のことを待つことになった。
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