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──数十分後
翔太とやり取りを続けながら、待ち合わせの駐車場で今か今かと翔太を待ち続けていた俺の元へ『一人の男性』が現れ、俺が座る運転席へと顔を向けてくれた。
窓越しに彼の顔を見たその瞬間だった。
俺は言葉を失ってしまった。
窓越しに立つ彼は、今まで出会ったことが無いほどの綺麗な顔立ちで、プロフィールだけでは表せない全てが揃いに揃っていた。
そして、言葉を失った俺の心はギュッと、どこか苦しくなる程に鼓動が早くなり、口が半開きのまま、顔までもが熱くなってしまっていた。
初めて感じるこの温かみ。
感じたことの無い鼓動の速さ。
き、君が…しょ、翔太…?
まさかの出来事と、このなんとも言えないもどかしさで数秒間見つめあった俺たち。
でも、このままでは何も進まないからと俺は運転席の窓を開け、目の前の彼に声をかけた。
「君が翔太くん…?」
「はいっ! えっと…遼さんですよね?」
そう、俺も優太という本当の名前を隠し、架空の『遼』という名前で掲示板を利用していた。
ひと時の快楽の為だけに本当の名前を晒すヤツは、ほとんどいないのが現実。
でも、何故だろう…『翔太』に『遼』と呼ばれた時、心の中では『優太』って呼んで欲しいと感じてしまっていた。
「…よろしく、とりあえず助手席乗りな」
「はいっ! お邪魔します!」
俺の一言に満面の笑みを零しながら、翔太は助手席へと乗り込んでくれた。
そして、彼が乗り込んだ瞬間、車内の雰囲気が一瞬にして一変した。
何故なら、翔太が乗り込んだ瞬間、とてつもなくいい香りに車内が包まれていったのだから。
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