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翔太が助手席に乗り込み、一番に感じたこと。
それは彼から放たれる香りだった。
爽やかな面持ちから放たれる爽快感がありながら、どことなく甘さを感じるこの香り。俺から放たれるフェロモンなんか比にならない程、誘惑がましくも惚れ惚れしてしまう香り。
「遼さん、よろしくお願いします」
「…あ、ああっ! 翔太くん、よろしく」
完璧な顔立ちと彼から放たれる香りに圧倒されていた俺は、翔太からの一言につい、返事が早口になってしまっていた。
そんな俺に対し、翔太はペースを一つも崩すことなく俺に笑顔を振り撒きながら、話を続けた。
「…ここだと、ちょっと人気がありますよね?」
「まぁ、スーパーの駐車場だしな?」
「遼さん、僕たち仕事中ですけれど、この後はまだ時間ありますか?」
「…ん? 時間ならあるけど?」
別に快楽を求めるだけならば場所は選ばない。
出来るところで一瞬の快楽さえ求められれば…
でも、翔太はそれを望んでいないようだった。
「それなら…僕が案内する場所に向かってもらっても大丈夫ですか?」
「はぁっ⁉ どこに連れていく気だよっ!」
「あっ…ご、ごめんなさい…嫌ならここでもいいんです…」
初めて出会って、知らないところに連れて行かれることに不安がない人などいないだろう。俺は彼への返答に、つい声が大きくなってしまった。
けれど、俺の声を聞いた翔太は驚きと共に寂しい表情を浮かべていた。
こんなに顔が整っていて、爽やかなヤツにこんな表情を浮かばせてしまったこと。そして、コイツの一つ一つの仕草や言葉に嘘があるとも、どこか思えなくて…
「わ、分かった! 行こう、ほら、案内してくれ!」
「…ほんとですか‼ やった! ありがとうございますっ!」
俺は翔太の言葉を信じ、翔太の案内で【とある場所】へと向かうことにした。
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