猫の獲物

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 飼い猫が、また廊下に獲物を並べている。  元野良の保護猫せ飼い始めて三年。飼われているという自覚はあるようだが、野良の頃の癖が抜けず、我が飼い猫は隙を見つけては外へ出て、何やら獲物を取って来る。そして自慢するかのように、必ずそれを廊下に並べるのだ。  虫の類は、持ち込まれるのは嫌だがまあ許せる。これが小鳥になると、可哀想さが募って、悪気はないとしても叱りたくなる。まあ、叱ったところで何が悪いのかなど判らないだろうから、徒労にしかならないことはしないけれど。  そういうことを、毎度毎回繰り返しているのだが、今回は、どう対処していいのか判らない獲物を取ってきた。  どう見ても人間の手首。でもこれが現存してないことを俺は知っている。  昔から霊感が強く、人には見えないものを散々見てきた。だから、何がこの世のものかそうでないかは一目で判るんだ。  絶対にこの世のものではない手首。しかしこれがここにある以上、現実に、手首を切り落とされた人が存在しているんだろう。  そういえば少し前に、そう遠くない公園で殺人事件があったと聞いたっけ。  めったに行くことのない公園だから、さして気にしてはいなかったけれど、もしかしてこれは、そこで殺された人の手首何だろうか。  そういえばあの事件、まだ解決したという話は聞いてないな。  この残像を頼りに現実の手首が見つかれば、事件解決の手掛かりになるかもしれない。でも、猫が幽体の手首を持ってきました…なんて話、警察が信じてくれるとは思えない。  でも、こうして手首を目にしたのは何かの縁だから、俺の身元がバレないよう、どこかの公衆電話から匿名の通報でもしてくるとしよう。 猫の獲物…完
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