注意事項

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「取扱書か。まずはりゅーくんの大まかな情報が欲しいな。細かい情報は必要になったら目を通せばいいか。なになに」  きゅーんって鳴く。これは寂しい、甘えたいのサイン。めっちゃかわいい、大好き。 「重要な情報だけど主観が多すぎる。まあいいか。りゅーくんは寝てそうだし自分の朝ご飯が先だ」  昨晩の味噌汁を温めて、ウインナーと目玉焼きを焼く。  目玉焼きに塩を軽く振って、茶碗のご飯には海苔をベースにしたふりかけを乗せる。  食事を終えると食器と水に浸けて洗濯物を干した。  長期休みは共働きの親のために洗濯物や掃除類は俺が行っている。  だがぐっすり寝ているりゅーくんのそばで掃除機の爆音は鳴らせない。  次は風呂掃除か。 「まだ寝ててくれるといいけど。ドラゴンの扱いは見当もつかない。どうしたらいいんだよ、それに姉が何者かより分からなくなった」  風呂を洗い終えて。  リビングに戻るとりゅーくんが口から炎を出していた。  ……は?  いや、待て待て。  どうしちゃったんだよ。 「俺にりゅーくんを止められるのか? そうじゃないだろ。ここは頼るしかない」  スマホを開く。    りゅーくんが危険行動する理由。  炎を出そうとしている。  不安で落ち着かない。知らない人や見たこともない場所に行くとその警戒心から目に入るものを焼却しようとする。  すぐ不安になって辿り着く先が怖いもの全部消し飛ばしちゃえと脳みそ筋肉なところもかわいい、愛してる。  それで実際焼却できるところも素敵!  実際に焼却できる?  いやいや。 「まずいまずいまずいまずいっ!」  りゅーくんをどうにかしないと。  でもりゅーくんからすれば。 「俺も知らない人なんだよな。どうしたら。信頼させて落ち着かせるとか」  りゅーくんに懐かれるためには危険人物ではないこと、りゅーくんにとって役に立つ人物であることを示す必要があります。 「いや間に合わない、取り敢えず落ち着かせるためだ、何かないのか? まずいまずいまずい。信頼している、……物! そうか」  不安だから警戒しているから焼却しようとしてるんだ。  だったら。  姉さんに力を借りる。  俺は急いで階段を上り寝室に向かった。  姉がたまに実家に帰ったときに使っている布団だ。  少しは匂いが薄れているかもしれないが。  掛け布団を持って一気に下る。  リビングはやや熱くなっていた。 「りゅーくん」   掛け布団を目の前に置く。 「きゅーん」  するとりゅーくんは落ち着いた。  口に火を蓄えても姉の匂いを認識らしい。  が、炎が零れた。 「ぬわーー!」  急いで洗面台に走る。  結局掛け布団は少し焦げて破れてしまった。  床も黒くなってしまう。 「こういうことは出掛ける前に言ってくれよ!」  俺は涙を流した。  りゅーくんは首を傾げる。  お前は悪くない、すべてはろくに説明をしなかった姉のせいなのだ。  掛け布団燃やしたのもそれで誤魔化そう、それでいい。
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