出会い

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「はあ、起きなさいよ。事前に連絡したでしょ? 今日だって」  目を覚ますと、ポニーテールの人型化け物がいた。  強いて言えば姉である。生物学者を目指して実家を飛び出したかと思えば、急に化学者になったり警察官になったり飼育員になったりと忙しい人である。  たったこれだけの説明で違和感を覚える人は少なくないだろう。  注意深い読者ならお気づきだろうが、姉は特殊な組織に配属されているか、コンセプトカフェで働いているか、コスプレイヤーか、声優か、元異世界転生者の類かいずれかであろう。  とまあ、想像を膨らませている場合ではない。  ほら。 「急いで、もう私出掛けるから。うちのりゅーくん、ちゃんと面倒見てよね。明日の昼に帰ってくるからそれまで。何か困った用に携帯に取扱書を送ったから。くれぐれも粗相がないように。うん、うちのペット絶対外に出さないでね。外に出したらただじゃおかないから」  ね。  どうやら限界大学生が必死の思いで手に入れた夏休みはいつまでも平穏ではいられないらしい。 「じゃあよろしくね!」  姉は作り笑顔を見せて部屋を出た。  両親は共働きで、少なくとも今から夕方まではペットの面倒を見ることになりそうだ。 「ったく、もっと寝かせてくれ」  凝った首の裏を手でほぐしながら部屋を出る。階段を下るとすぐ前が玄関だ。  ペットはリビングにいるらしい。 「犬か猫か。まあ、俺はどちらかというと猫派かな? でも舌をぺろっと出すワンちゃんも捨てがたい」  リビングに着く。  そこにはソファで寝転ぶりゅーくんがいた。 「……ええ」  背中から生える二つの翼、ごつごつした皮膚、力強い尻尾。  あれだ、あれ。  犬でも猫でもないし、鳥類でもハムスターでもないというか。  そういう括りではなくて、少なくとも現実世界に似合わないファンタジーの産物。 「人間の子どもサイズのドラゴンじゃないか。これは流石に」  まじか。  俺の姉って特殊な組織の人間なのか。  どうしたらいいんだ? 寝ぼけていたがもう目が覚めた。
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