第2章・愛に溺れて 1ー②

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第2章・愛に溺れて 1ー②

明け方の4時前。 アイシャは、水槽の前でひとしきり泣いて、その場を離れた。 ドアの内鍵を開ける。 この研究室からなら、裏門の方が近いので、そちらから出れば人目にはつかないだろう。 自動ドアのロックが解除され、扉が開かれて部屋を出ようとしたアイシャは、足を止めた。 ドアの外には、ファイザルが立っていた。 いつから立っていたのだろうか。 まさかあの電話を切った後から6時間以上、ずっと立っていたなんて事はある筈がない。 「出て行くとは、どういう事だ。アイシャ」 「ファイザル……」 「お前は絶対に出て行かないと約束しただろう」 「サラを産んだ後の犬には用はねぇだろ。廃棄処分される前に出て行くだけだ。使用済みの実験体にだって、生きていく権利位、くれても良いだろ?」 「……許さん」 ファイザルの全身から、熱いオーラのようなものが見えたような気がした。 全身が逆毛立って、毛穴から熱気が伝わる。 それは沸き立つような怒りのオーラだった。 「出て行く事は許さん!お前が歯向かうなら、また縛り付けるだけの事!」 ファイザルは、アイシャの体を強引に肩へ担ぎ上げると、大股で歩き出した。 「ちょっ……!は、離せよっ!何なんだよ!俺の仕事は、もう終わっただろっ!」 「お前の仕事は、この先も私の言う事を聞く事だ。……今から命令する。お前は、もう、私の部屋から出る事は許さん」 「なっ……。何でだよ!もう、俺の体には用はねぇだろ!何でそんな事、すんだよ!」 「何で……だと?」 ファイザルの足が急に止まった。 無言になってしまったファイザルに、アイシャは最後の力を振り絞って暴れまくった。 「もうっ!もう俺を開放してくれよ!新しい実験体もいるんだろ!早く、さっさと俺を処分してくれ!」 「新しい実験体?……何を言っているのか分からん」 ファイザルは、部屋へ戻るとアイシャを再び鎖に繋いでしまった。 そして、嫌がるアイシャの着ている服を全て脱がせる。 「この部屋に服は置かない。その鎖も外させない。お前はこのまま、私の元にいろ」 「何でこんな事をするんだ!意味ねーだろ!」 「意味?……そんなものは必要ないな。お前は私に体を与えていればいい」 体を与えていればいい。 それは、性欲の捌け口であれば良いという事か。 アイシャは、感情の高ぶりを抑える事はなく、思いの丈を叫んだ。 「俺はお前のオモチャかよ!」 「アイシャっ……!」 ファイザルは、アイシャの体を力任せに引き倒した。 そして、その唇を貪るようにして封じ込めた。 「んふぅっ!ん~!……んぐっ!」 アイシャがどれだけ暴れても、三回りは体格差のあるファイザルを押し退ける事は出来なかった。 ファイザルの手がアイシャの膝裏に回り、裂けるかと思う程に大きく開かせる。 このままだと、以前のように無理矢理、強姦される。 その危険を感じたアイシャは、体を捩ってファイザルを蹴り上げた。 それと同時に、その唇と唇は離された。
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