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第2章・愛に溺れて 2ー③
「ファイザル様!貴方の精子を注いで欲しいんです!その為に、私はここまでのし上がって……」
「……成る程。娼館ででも働いていた時に、下衆な王族をたらし込んだか。よくも髪の毛を染めた程度で、ここまで来れたものだ」
まるで見てきたかのような口振りに、ジャラールの背中からは冷や汗が流れた。
確かに、ジャラールは男娼をしていた時に、王族の老人に買われていった。
若い犬をオモチャにするつもりだったその王族を、逆に快楽で夢中にさせ、偽りの息子にまで成り上がった。
「わ、私が初潮を迎えたのは本当です!今回が初めてで……」
「初潮ではあるだろうな。処女ではないかも知れんが」
どこまでバレているのだろうか。
ジャラールは焦る気持ちもあったが、体はトゥルカの実による快楽で気が狂いそうになっていた。
「ファイザル様は、……トゥルカの実は効かないのですか?」
「王族は犬族程に効果は出ない。その上、私の体は元から薬物やアルコールは効かないのだ。多少、気分が高揚する程度だな」
「……そんなっ……」
ジャラールはもう堪らなくなって、膝の上で服を脱ぎ始めた。
そして、わざと淫らなポーズを取って、ファイザルを誘う。
余程に自信があるのか、その勝ち誇った顔は嫌味な位だった。
「ジャラール。金の犬族に番がいただろう。そのオスを裏切ってまで王族になりたかったのか」
「番など……幼い頃に死に別れました。私には、何のしがらみもない。この体で権力を握るには、王族の血が必要なのです」
「分かった。では、選ばせてやろう。体外受精か、体内受精か。交尾による受精か」
「交尾!交尾して下さい!私の中に、ファイザル様の精子が欲しい!」
「……分かった」
ファイザルは、裸のジャラールを抱き上げて、隣のベッドのある部屋へ移動した。
ジャラールはこれから迎える愉悦の時間を期待するが故に歓喜の余り、軽く達してしまう。
そのまま、中央にあるベッドへと下ろしてやった。
「ファイザル様っ!早くっ!早くぅ!」
「そう焦るな。……では、頼むぞ?」
ファイザルの背後から、数人の貴族達が現れ、服を脱ぎ始めた。
「……な、何?……ファイザル……様?……これは、どういう事ですか?」
「検査の結果、お前は褐色の貴族との受精の確率が高い事が分かった。もちろん、金の犬族が一番、妊娠しやすいんだが、より身分の高い者を望んでいるのだろう?」
「ち、違います!私は、ファイザル様の御子をっ……」
「残念だが、薬を服用しても私との適合率は4%だった。褐色なら87%まで確率が上がる……それでも、生まれる子供が褐色とは限らんが」
ファイザルは、部屋の出口へ向かった。
ジャラールの奇声が背後から聞こえたが、それを無視した。
だが、その扉が閉まる瞬間、それは拒絶ではない悦楽の声に変化していた。
これで、貴族とも受精が叶えば、益々、薬の効能への信頼度が上がる。
異種間同士の受精の後は、王族同士の有効性を知りたい。
だが、王族自身のプライドが、繁殖の一番の妨げになっていた。
長い年月の積み重ねが、濃い血を更に濃くして、卵子や精子に異常を来していた。
王族は本来、元々ヒト型だった。
優れた能力を伝えるが為の一族同士の結婚が、より濃い獣人産んで、野生に戻っていったのだ。
それは、王族の純血を守りたいという、思想が育てた異常事態であるのは知られざる秘密ではあった。
恐らくそれを王族の者達は認めないだろうし、発表してもその事実は揉み消されるだろう。
新たなる血の融合が、王族を存続させる。
それを果たして受け入れる事が出来るかが、これからの王族の未来にもかかっていた。
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