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第2章・愛に溺れて 3ー②
脇腹を数針縫われたアイシャは、すぐに城へ帰る事が出来た。
ファイザルが専門外ではあったが、医師の免許も持っていたので、自宅での治療も可能だったからだ。
アイシャの希望から、サラの保育カプセルの隣で療養する事になった。
元気に手足をバタつかせるサラを横目に見て、アイシャは安堵する。
王族の獣としての生命力に感謝した。
そもそも、王族の子供はその成長も速く、腹での生育も、外に出てからの成長も、他の一族よりも群を抜いて優れていた。
3ヶ月で歩き出し、半年で会話をし始める。
ほとんどの王族は、10歳までに最終学歴を終え、アルザークの主だった機関で能力を発揮するか、子作りに専念するかになる。
犬族とのハーフであるサラが、どれ程の能力があるかは未知数ではあったが、検査の結果、遺伝子的にはほとんど王族のものであると判明した。
それでも、これから犬族の血を引くという事で差別されるかも知れないのを、アイシャは心配した。
犬族は、世間的には獣人としては認められていない風潮がある。
いくら、中心都市アルザークの中で権威あるファイザルの子供であっても、奇異の目で見られるのは避けられない。
それを言うと、ファイザルは取り越し苦労だと言う。
その真意は、電波を通じて知る事になった。
王族の妊娠が、最早、ファイザルの発明した妊娠誘発剤なしでは不可能である事が報道されたからだ。
そして、それは血統を重んじる余りに、近親婚を続けた歴史の為である事。
今後は、他の一族との融合が、未来では自発的に交尾によって妊娠出来るようになるかも知れない事も、身分差の垣根を崩壊させる歴史的な発表となった。
これからは、サラのようなハイブリッド種が先導を切る時代が来る。
そして、いつか3つの身分の壁は完全に崩壊して、新しい時代が来るとファイザルは言っていた。
犬族であっても、蔑まれずに同じ獣人として生きていく権利を持つ事が出来る未来。
それは奇跡のようでもあった。
闇夜の中で蠢く何かがあった。
荒い息使いと、濡れた粘着音。
オスの腰が、大きく揺れ動いている。
レイラは、オスの腰を挟み込み、行為に溺れていた。
王族の性欲は、果てる事がなかった。
幾度目か分からなくなったオスの子種を、体内に受け入れる。
愛する者の子種であると信じて。
発情を抑えられないレイラは、ファイザルではないオスの体に身を任せていた。
あまりの貪欲さに限界を感じていたオスは、枕元の電話機に手を伸ばした。
これ以上、行為を続けるには限界を感じていたからだ。
すぐ近くにいたのか、二人の王族が部屋に入って来た。
そうしてまた、深い闇に堕ちる。
三人の王族のオス達の間で、レイラは過ぎた快楽に理性を失う。
あられもなく身悶えるその様は、異様な光景だった。
「オイ……とんでしまわれたぞ?それでも、まだやるのかよ」
「トゥルカの実を幾つも食されていたからな」
「いくら受精しないとはいえ、他の王族との交尾は不味くないか?」
「いや、許可は得てある。存分にお相手しろとのお達しだからな」
「どこまで出来るのか、試してみるのも悪くない」
夜があけても、また暮れても、乱行は続いた。
獣達の饗宴を遮る者は、誰もいなかった。
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