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第3章・安住の地で 1ー②
サラが生まれて来てくれたお陰で、アイシャは『散歩』と称して近くの公園まで外出が出来るようにもなった。
勿論、ファイザルと一緒でなければ外には出しては貰えなかったが、それでも三人で出かければ、まるで家族そのものだ。
報道されているからか、3人が移動する所、移動する所に獣人が群がった。
それは、ファイザルだけならば王族以外は近寄らなかったかも知れないが、アイシャが母親である事から貴族や犬族までが、気軽に声をかけて来る。
愛らしく、人懐っこいサラは、人々の心を和ませた。
サラはファイザルに抱かれながら、その長い黒髪をギュウギュウと引っ張った。
「痛いぞ。サラ」
「もう、その長い髪の毛、括って上で束ねておけば?お前、そのうちサラにむしられて、ハゲるぞ?」
アイシャは、ベビーカーを押しながら、片方の手でサラの手にもつれたファイザルの髪をほどいてやった。
「でも、サラはどこに行っても皆に構って貰って羨ましいなぁ。幸せだなぁ、サラ」
「何だ、アイシャも構って貰いたいのか」
「いや、まぁ、別に俺は構って貰わなくても良いんだけど」
「私が構ってやろう」
「何で、アンタだよ……」
「私がお前を構わなくて、どうする?」
「じゃあ、いっぱい俺を構ってくれるか?」
「……喜んで」
ファイザルは、アイシャにキスをした。
ほんの少し前までは、王族と犬族が並んで歩く事は有り得なかった。
今も偏見がない訳ではない。
それでも、ファイザルは気にしなかった。
外でも構わず、人目を憚らずアイシャを抱き締め、キスをする。
その姿は、人々の注目を集めた。
多くの人々の視線の中に、氷のような凍てつく眼があった。
もしも、視線だけで殺人を犯せるなら、その瞳は間違いなく2人の命を潰えさせていただろう。
そんな目にも気付く事なく、ファイザルはアイシャの腰を抱き寄せ、歩きながらもキスを繰り返した。
サラを寝かしつけると、アイシャはやっと一日の育児を終えて、休息を取る。
特に今日は、長い時間を公園で過ごしたので疲労が激しかった。
ただサラを散歩に連れて行くだけなら、こんなにも疲れる事はないのだが、とにかく人に群がられるのには神経を使う。
自分が犬族でありながらハイクラスの生活をして、王族の子供を持つ母だという、身分不相応な立ち位置での辛さもあった。
常に、決してなくなりはしないだろう王族の純血を望む者達から、命を狙われるのではないかという危機感もあった。
アイシャはベッドで毛布も掛けずに、バスローブのまま、うとうととしてしまった。
「風邪を引くぞ、アイシャ」
「……うん……」
「こら、そのまま寝るな」
「……やっあ、あぁっ……」
ファイザルが定位置にアイシャを寝かせようと腰を触ると、アイシャの口から悩ましげな声が漏れた。
ファイザルは、その声にビクリと体を震わせた。
もう、幾日も肌を合わせていない二人は、まるで触れる事を恐れるように不器用になっていた。
「……アイシャ……。あまり、私を困らせるな」
「……何で困んの?」
「私の忍耐力にも限界が……」
「我慢、しなくても良いのに?」
ファイザルは、耳を疑った。
まるで、アイシャから誘われでもしたような台詞が聞こえたような気がした。
「……俺、もう、全然、大丈夫なんだけど。……ていうか、出産で体質が変わったのか、発情期のまんまだから、ずっと悶々としてるのは俺の方なんだよ」
アイシャの体は、薬による排卵が誘発され続け、既に犬族の発情期のサイクルではなくなっていた。
「アイシャ、私がどれだけ我慢をしていると……」
「だから、我慢しなくても良いってのに」
「私は、また、お前をめちゃめちゃに犯してしまうっ!」
「良いよ?めちゃめちゃに犯して」
「アイシャっ!」
アイシャの一言は、ファイザルの中の獣を解き放った。
そして、その勢いのままにアイシャを引き倒した。
アイシャのバスローブを破りかねない勢いで開かせると、その胸の頂きに貪りついた。
「あぁ~!ファイザっ……ルぅ」
「アイシャ。……お前の体は、……どこもかしこも、果実のような味がする」
「スゴいっ……尻尾……、マックス振りまくって……んな。……そんな、嬉し?」
「……嬉しい」
「あぁっ!ファイザルっ!」
ファイザルが唇を徐々に下へ降ろして、アイシャのへそを舌先で弄った。
その長い黒髪がアイシャの腰周りにサラサラと優しく触れて、アイシャは愛されている実感に酔いしれた。
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