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第1章・絶望の果てに 3ー②
ヒト型の王族は、アルザークで確認されているだけでも10人程しかいない。
その全ての王族を知っているファイザルは眉を潜めた。
「お前、何者だ?王族ではないな。女の匂いがする」
男は、クスリと笑って上目遣いにファイザルを見つめた。
「流石に王族の方には隠せませんね。私は、アルザーク中央省庁から派遣されましたジャラールと申します。私は、ずっと親元で身を潜めるようにして育っていたのですが」
「その体だからか」
「はい。ヒト型の上に王族でも初めての両性なのです。親が奇異の目で見られる事を恐れまして」
ジャラールはファイザルの胸に手を当て、艶かしい目で乞うた。
「王族の繁殖が減っている時代ですので、私がファイザル様の元に派遣されました。勿論、助手としての頭脳も貴方様のお役に立てるのもありますが、私の体も繁殖の研究に使われるようにと……」
「……成る程。面白い」
ジャラールは、ベッドで毛布を被るアイシャを見つけ、片眉を吊り上げた。
「あれが繁殖に成功した犬ですか」
「そうだ。今のところ、あれにしか試してはいないが、初めての実験で成功した。異種間でも可能なら、同じ王族なら更に確率が上がるだろう」
「是非、私の体でお試し下さい。私なら、あの犬よりも優れた能力の子供を産んでみせます」
「産むも何も、お前は発情期が来ていないだろう?その前に、初めての王族の両性体ならば、まずは体を調べねばならん」
「貴方に調べて頂く為に参りました。発情期は近い内に来ます。それまで存分にお調べになって、私の発情期が来たら交尾して頂けますか?」
「……考えておこう」
ファイザルの思考は、ジャラールの特殊な体質に異常なる興味を覚えた。
科学者の性分で、珍しい獣人ならば調べたくなる気持ちを抑えきれない。
ジャラールは、アイシャをチラリと流し見た後、ファイザルへと凭れかかった。
「何なら、今すぐにでもお調べ下さい。どんな事をされても構いません」
「では、早速調べさせて貰おうか。……研究室に来い。精子の数や、子宮が機能するか調べる必要がある」
ファイザルに肩を抱かれて部屋を出るジャラールは、アイシャへ勝ち誇ったような皮肉めいた笑い顔を残して去って行った。
妙に体を火照らせたアイシャは、一人ぽつんと部屋に残された。
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