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〇神 千里 「本当に…ありがとう…」  目の前で、高原さんと瞳が俺に頭を下げた。 「いや…俺は別に何も…」  そう言う俺に。 「もう、お前にはこの会社全部やってもいいぐらい感謝してる。」  高原さんは、大それたことを言った。 「え?それって、千里をあたしの婿養子にって事?」 「おい。」  瞳の言葉に即突っ込むと。 「冗談に決まってるじゃない。もー…頭の固い男。」  瞳は首をすくめた。 「…もう、吹っ切れてるのか?」  高原さんが瞳に聞くと。 「え?何が?」  瞳はキョトンとして高原さんを見た。 「…千里が…」  高原さんは、俺をチラリと見て、それからまた瞳を見る。  う。  それかよ。  高原さん、せめて俺がいない時に… 「ああ…だって、あたしと千里はとっくに別れてたし、結婚報告もしてくれたもの。ね。」  瞳がサバサバとそう言うと、高原さんは眉間にしわを寄せて。 「そうならそうと、なぜあの時言わなかった?」  早口で俺に言った。 「あの時って?」 「結婚報告に来た時。瞳は知ってるのかって聞いたのに、こいつ…何も答えなかった。」 「……」 「いや、その話は…」  ああ…何だよ。  そんな話、別にしなくても…  俺が頭を抱えそうになってると。 「…やっぱり、あたしの元彼は、サイコーの男だな。」  瞳が満面の笑みで言った。 「おい。」  元彼って何だよ。  眉間にしわを寄せて瞳を見ると。  いーじゃない。  瞳は眉毛を上げて得意げな顔。 「…よく分からないが…ま、一つずつ上手くいくよう…進めていこう。な?瞳。」  高原さんが瞳の頭を撫でる。 「…うん…お父さん…あの…」 「ん?」 「…酷い事言って…ごめん…」 「……」  高原さんが、瞳の頭を抱き寄せる。  瞳が、高原さんの胸に身体を預ける。  それは…映画のワンシーンのようだった。  そんな二人の姿に見惚れてると。  ♪♪♪  高原さんのデスクで電話が鳴った。 「ああ…ああ、いるぞ。千里、電話だ。」 「…俺に?すみません。」  いい所だったのに…誰だよ。 「もしもし。」  高原さんから受話器を受け取ると。 『やっぱそこにいたー。』  相手はプライベートルームにいる、アズからだった。 「…何だよ。」  高原さんに背中を向けて、受話器を持ち直す。 『今さ、電話がかかったよ?』 「誰から。」 『知花ちゃんの実家から。大至急連絡してくれって。』  知花の実家から…? 「……分かった。」  俺はアズとの電話を切ると。 「じゃあ、俺はこれで。」  高原さんと瞳にそう言って、会長室を出た。  プライベートルームだと…アズがいるし。と思って、八階に降りて公衆電話から桐生院に電話をした。 『もしもし、桐生院でございます。』  電話では、いつもの様子でばーさんが出たが。 「あ、千里です。な」 『千里さん!!大変なんです!!』 「……」  ばーさんは、俺の言葉を遮って。 『知花が…』 「…知花?知花に何かあったんですか?」 『知花が…赤毛のまま学校に行って…』 「…え?」 『結婚してる事を言って…』 「……え?」 『アルバイトもしてる…って…』 「…………え?」 『……退学になりました。』 「……………………はあ?」
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