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 〇森崎さくら 「……」  最近…  なっちゃん…が、いない…事が多い…  帰って来ても…  あたしを…黙って見つめて… 「…さくら…愛してるよ…」  変わらず、そう言ってくれるけど…  どこか…違う。  何だか…とても…寂しそうで…  あたしは、身体に…力をこめて…  隣で、眠る…なっちゃんの頬に…触れる。  …だけど…  そっと…触れたいのに…  頬に届くよう…必死で腕を上げて…  ビタン  あたしの手は…  なっちゃんの頬を…打ってしまう形になる… 「…どうした?何か気に入らないのか?」  ああ…起こしちゃった…  なっちゃんは…あたしの手を取って…手の平にキスをして… 「…気に入らない事だらけだよな…」  小さく…そう言った。  …どうして?  あたし…なっちゃんのそばに居れて…  なっちゃんと、こうして…一緒に眠れて…  幸せなのに…  …そりゃあ…  欲を言えば…キリがない。  歩いて…走って…  なっちゃんに…とびついて…  大好き。  愛してる。  って…何回も…言いたい。  疲れてるなっちゃんの身体を…  ギュッと、抱きしめてあげたい…  だけど…今のあたしには、それが出来ないから…  こうして…  なっちゃんが、あたしのそばで眠るのを…  なっちゃん…あなたが大好き…あなたがとても大切…って…  そう、心の中で言い続けながら…  なっちゃんのまつ毛が、時々動くのを…見つめたり…  何か…話し出しそうな口元を…見つめたり…  できる事は…少ししかないけど…  それでも、あたしは…  ここにいるだけで…幸せなんだよ…?  …何か、あったの…?  聞きたくても、聞けない。  なっちゃんは、あたしに心配をかけまいとして、何も言わない。  だから…  あたしは…  全力で、祈るしかない…  悲しいけど…  それしか出来ない…  でも、ね…  祈る事が出来るなら…  十分だよね…  だって、あたし…  それも出来なかったんだもん…  うん…  今は、今…できる事を…頑張ればいいんだ…  なっちゃん…  あたし、祈ってるよ…  なっちゃんが…毎日、笑っていられるように…  そして…  いつか…  あたしが、なっちゃんを守る日が…来るように…  あたし…  負けないから… 「…眠れないのか?」  なっちゃんが、あたしの目を見る。  あたしは、瞬きを二度して…  目を閉じた。  なっちゃんは、クスッと小さく笑って…キスして… 「…ありがとう、さくら…」  そう言って…あたしを優しく抱きしめた…。
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